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「え?」

 僕は思わずそう聞き返した。電話の向こうのすずは、ものすごい勢いで泣いている。慌てて、病院に向かった。
 ロビーに着くと、顔をぐしゃぐしゃにしたすずが立っていて、僕は急いで近寄ってその手を握った。

「大丈夫?」
「あた、あたしは大丈夫……」

 どう見ても大丈夫じゃなさそうだから聞いているのだが。とにかく、病室に急ぐ。
 痩せ型の僕とは違って、筋肉質で大柄なあゆむくんが、目を閉じてそこに寝ていた。すずが泣きながら、途切れ途切れに話し出す。電話では聞けなかったのだ、あまりにすずが混乱していたから。

「け、警察とびょいんから、で、わあって、あーちゃんが、意識不明だって、リンチって」
「……」
「ぼこぼこ、傷だらけで、目、さまさないし、あた、あたし、あたしどうしたらいいのか、分かんない」

 改めて、寝ているあゆむくんを見る。穏やかに眠っているが、いっこうに目を覚まさないらしい。呼吸器がついていないから、そこまで大事でないと思うが、混乱したすずにはそんなことは関係ないようだ。
 僕はあゆむくんに近寄って、露出している頬を思い切りつねった。

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