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「でね、アチョーって言うんだよ、可愛いと思わない?」
「……お前、実はバカなんだろ? そうなんだろ?」
「失礼な。すずが可愛くないとか言う? ヨシはそういうこと言う?」
「いや、可愛いとか可愛くねぇとかじゃなくてさ、お前、バカだろ?」
「だからさぁ、たとえば奈央ちゃんがアチョーとか言ったらめっちゃくちゃ可愛いでしょ?」
「いや、奈央がアチョーとか奇声発して目潰ししてきた日にはオレはマジでキレると思う」
「ハァ、これだから恋愛初心者は……」
「いや、これはもう里玖、お前が真中バカなだけなんだろ? 親バカ・子バカ・真中バカなんだろ?」
「……あのさぁヨシ、俺を怒らせるとどうなるか分かってる?」
「あ? お前権限で朝練のノルマが増えるとか?」
「それで済めばよかったのにね」
「……?」



 数週間後、文化祭前日準備にて、クラスの女子に追い掛け回され、スカート姿で絶叫しながら逃げ回る良成の姿が目撃された。
 そして里玖は、それを見て爽やかな笑みを浮かべていた。


20060922
20080323

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