OMAKE
kiss me kiss me
仕事のない日曜日は、最高の日曜日。大学がない比奈と、昼ごろまでベッドの中でいちゃいちゃできる。
俺のTシャツを着ている比奈が、ベッドにうつぶせになって両肘を頬杖にしているのを上からがばっと抱き寄せて、耳にちゅっとリップノイズを響かせてキスをする。
「せんぱい、お昼ごはん、なにがいいですか?」
「んー。比奈がつくってくれるのだったらなんでも……」
「なんでもいいは、なし!」
「えっ。じゃあ……材料は何があるの?」
「んと、えと、卵と、お米と、お野菜と、ホットケーキの粉と」
「じゃあさ、にんじんホットケーキつくって」
「ん? そんなのでいいの?」
比奈が不思議そうにまばたきする。俺は頷いて、にこっと笑う。
「俺、比奈のホットケーキ、好き」
「ホットケーキは誰がつくってもおんなじ味だもん……」
「そんなことないよ」
全然そんなことはない。比奈がホットケーキをつくっているところを見たことがないので分からないが、比奈はきっと何か魔法を使ってる。だって、あんなに甘くてふかふかのホットケーキは俺には作れない。
比奈が頬杖を解いて、ころっと俺のふところにもぐりこんできた。可愛い。
「比奈って、お花みたい」
「ん?」
「ふわふわしてて、可愛くて、ころころしてる」
「んー……」
唇を尖らせた比奈が照れているのはもうどう見ても明らかである。
そっと比奈の唇に、自分の顔を近づけると、戸惑ったように目をうろうろさせて、それからきゅっと目を閉じたので、ちょっとだけ意地悪してそのままフリーズしてみる。
いつまでたっても重ならない唇に、比奈が不思議そうにちらっと目を開ける。
「……キスしてほしいの?」
比奈の顔がかあっと赤く染まって、でも比奈はうんとか言えないし、かと言ってううん、と意地を張ることもできないのである。
真っ赤になった顔に、そろそろ許してやっかと思っていると、比奈がぽつっと呟いた。
「…………し、したいの?」
「……」
とんだ小悪魔である。
「質問に、質問で返すのは駄目なんだよ」
「……で、でも」
「したいよ」
「……」
けろっとした顔で言うと、比奈はますます顔を赤くする。そのまま素早く奪って、もう一回軽くちゅっとくっつける。
それからふふふと笑って、もう一回。
「せんぱいばっかり、ずるい」
「ん?」
「比奈ばっかり、どきどきするよ」
「俺もけっこうどきどきするよ」
「うそだぁ」
顔に出ないだけで、比奈の小悪魔発言にけっこう心臓が大忙しなのは、しばらく内緒にしておこうと思う。
20130920