03



 あくる日の昼休み。
 今日は俺の隣には、色白なプレイボーイではなく小さくて一瞬女かと思うようなちっさいのがいた。つるまないと飯が食べられない、なんてアホみたいなことは言わないが、気づけば尚人もこの純太も、いるのだ。害があるわけではないから、無碍に追い返したりする必要もない。話しかけられれば答えて、それ以外はいないものとすればいいのだし。
 純太は、「二ノ宮のノートがね」とか「OCの時間二ノ宮がね」とか、とにかく好きな女の話がしつこい。二ノ宮と言われても、誰のことか分からないから想像のしようもないし、純太自身が二ノ宮を好きだということにおそらく気付いていないから、余計にたちが悪い。

「んでねーんでねー二ノ宮がねー……あゆむ聞いてる?」
「んー……」
「…………あーゆーむー」
「あ?」
「今、えろいこと考えてたっしょ」

 にま、と目を愉快そうに吊り上げて、純太が昇降口の方を指差す。
 発言と指を差した先にある光景に密かに舌を巻き、別にと顔を背ければチェシャ猫のようににやにや笑いがつきまとってくる。
 純太が指差した方向には、体育の授業なんだろう、Tシャツにショートパンツ姿で友達と談笑するあさひの姿があった。そして言わずもがな俺は、昨日の尚人のせいで無意識のうちにあらぬ妄想をしてしまった。

「あゆむにもついに春到来かぁー」
「……」
「頼子ちゃん、いー子だからオススメよー」
「アイツ、よりこっつーの?」
「うん、……て、知らなかったの?」

 呆れた、と頬を膨らませる純太が女みたい(いや、たぶんそこいらのギャルよりよっぽど可愛い、ぶっちゃけあさひより可愛い)なのは置いといて、とりあえずあさひのフルネームを図らずも知ることとなる。
 あさひよりこ。……どちらも名前みたいだ。あさひ、よりこ……ひよこ。

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