05
誕生日なんて、きっとあゆむは知らないと思ってた。わたしが言えば、何かプレゼントをくれたり、デートに付き合ってくれるんだと思ってた。
このネックレスをあゆむが選んでいるところとか、買ってきて、わたしに早く渡したくてうずうずしているところとか、そういうのを想像すると、なんだか自分がすごく小さいことでもやもやしていた気分になってくる。
別に、ものにつられているわけじゃない。ただ、あゆむがわたしの誕生日に自発的に何かしてくれている、それだけが。
「まだ怒ってんの?」
「……」
そもそもわたしは怒ってたわけじゃないけど、今更引っ込みはつかなくて、あゆむに、不安だってことを分かってほしい。でも、胸がいっぱいで、もういいかな、って思っている自分もちょっとだけ顔を出す。
なんにも言えないでいると、あゆむがため息をついてわたしをぐっと抱き寄せた。厚い胸板に顔が当たって、思わず目をつぶる。
「ごめんとか言えば機嫌直すの?」
ちょっと違う。わたしはあゆむに謝ってもらったりしたかったわけじゃない。首を横に振ると、じゃあ何、と言うので、もそもそと呟く。
「……あの子には、デート行こうとか、何かしようとか、言ったの?」
「は?」
「デートとか、いっつもわたしから誘ってばっかりだし、めんどくさそうだし」
「めんどくせえよ、デートする意味が分かんねえし」
「……だから、わたし不安になる。たまには、あゆむから誘ってほしい」
あゆむは、ちょっと考えるように上を向いて、それからわたしの顔を覗き込んだ。
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