04
「だって、あゆむが悪いんだもん! べたべたされてるのに、それくらいふつう、みたいな顔するし、あの子わたしのことかわいいっていうし、自分のほうがかわいいくせに、そういうのなんかみじめだし、あゆむ、あゆむが電話してくれないから、どうでもいいんだって思うし、わたしとはデートとかあんまりしてくれないのに、あの子とは遊ぶみたいだし!?」
「……お前、何言ってんの?」
「だ、だ、だって、わたしの前、で、あんな、べたべたしなくても、いいじゃん……」
みじめすぎる。こんなぼろぼろ泣いて、あゆむは平然とした顔で。わたしばっかり必死で。
うつむいて泣いていると、あゆむの足がこっちに近づいてくるのが見えた。思わず後ずさろうとすると、腕を引っ張られてそれも叶わない。
「馬鹿か、そんなしょうもないことでこんな泣いて」
「……!」
しょうもなくないんだって、どうしたってあゆむには分かってもらえない。
ただのやきもちじゃないことも、きっと分かってもらえない。不安だってことも、きっと分かってもらえない。
びりっと紙をやぶるような音がした。それから、ちょっと強引に引き寄せられる。
「……」
「じっとしとけよ」
「え?」
首筋に何か冷たいものが当たった。この感覚は知ってる。ネックレス、だ。なんで……?
「ほんとは昨日渡そうと思ったの。なのにしょうもないことでなんか怒るから」
「……なんで」
「は? それマジで言ってんの? お前来週誕生日じゃん」
「……」
えっ?
「え? 違ったの?」
「……違わない」
あゆむが金具をつけて、わたしを見て満足そうに頷く。きっと似合ってるんだ。自分の首元を見るけど、鎖骨のあたりに絡むそれは、角度的にうまくチャームが見えない。
「誕生日に渡そうと思ったんだけど、なんか、プレゼントって自分の手元にあるとそわそわするっつうか、早く渡したくなるっていうか」
「……」
そっと触ってみる。チャームのとんがった感触が指に伝わる。
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