01.棘皮動物動物系統分類学8中

「いらっしゃいませ」
店の扉が開く音がしたので、
笑顔で接客用語の一つを口にしつつ入り口に顔を向ける。

「あ、なんだ承太郎さんでしたか」
「なんだとはなんだ」

来店されたお客様は、ご近所に住んでる承太郎さん。
一人暮らしをしている私を不憫に思ってか、
夕飯や御裾分けをジョースター家の方々から頂くので
承太郎さんとも顔なじみ。

「おい、なまえ。こないだ頼んどいた本はもうきたか?」
「あぁ、はい、ちょっと待ってくださいね」

どうやら注文していた本を取りに来たらしい。
レジのお客様注文棚を漁り承太郎さんの本を探す。
あ、あったあったこれだ。

「はい、こちらの書籍でお間違えございませんか?」
「…その堅苦しい喋り方なんとかならねぇのか?」
「ご近所さんでも、今は一応お客様、ですから」

堅苦しいって言われても、いつもこんな感じだと思うんだけどなぁ。

「しっかし、こんな古い本よく手に入ったな」
「注文した承太郎さんが何言ってるんですか。
確かにかなり古い本でしたけど、品揃え世界一!ですからね。頑張りました」

ほんのちょっと店長の真似をして言ってみたら鼻で笑われた。悔しい。
中身を捲って確認している承太郎さんに気になった事を聞いてみる。

「あの、棘皮動物ってなんですか?」
「ん?あぁ…」
「今ちょっと説明するのめんどくせぇ…とか思いました?」
「…」

だんまりって事は図星だな。

「面倒くさがらずに教えてくーだーさーいーよー!」
「…わかったからギャーギャー騒ぐな」
「本当ですか!」
「あぁ。とりあえず、次の休みに水族館行くぞ」
「…ん?」

あれ?なんで水族館?

「その方が手っ取り早い」

そう言って承太郎さんはにぃっと笑った。

「この本の礼だ。なまえ、次の休みは開けておけよ」

どうやら私に拒否権はないみたいです。




(承太郎さん、そちら一点で33600円です)
(…やれやれだぜ)








(2011.8.13)
承太郎が承太郎じゃない件。精進します。




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