愛と呼ぶならご自由に

「ねぇ、ディエゴ」
「何だ」
「風の噂で耳にしたのだけど、ホット・パンツとキスした事あるってのは本当?」

俺は飲んでいた珈琲を盛大に噴出した。

「やだディエゴ汚い!」
「げほっ…お前、その話…」
「だから、噂で聞いただけだって」

誰だこいつにくだらん話を吹き込んだ奴は。
(どうせジャイロかジョニィあたりだろう)
なまえは俺が弁明をしないのを肯定と受け取ったらしく、勝手にべらべらと喋り始めた。

「いや、別にそれを咎めようとか、そう言う訳じゃないんだよ」
「けほっ…(やべぇ気管入った)」
「でもまさかディエゴがホット・パンツの事を…確かに格好良いもんね、恋に落ちるのも当然よ」
「…は?」
「いいんだよディエゴ、恥ずかしがらなくたって!今の世の中珍しい事じゃないし!」

「男の子同士は難しいかもしれないけど、私、全力で応援するね!」

…どうやらこいつはとてつもない勘違いをしてくれているようだ。

「誰が、誰に、恋してるって?」
「ディエゴが、ホット・パンツに」
「断じてNO、だ」

きっぱり言い放ってやると、なまえは釈然としない表情を見せた。
阿呆に付き合うのは疲れるが、変な誤解をされたままだと俺が困る。

「俺の名誉の為に言わせてもらうが、あれは不可抗力だ」
「キスしてたのに?」
「どちらかと言えば殺される一歩手前だったな」
「貴方を殺して私も死ぬ、的な?」

なんて脳内薔薇色野郎だ。

「それにホット・パンツは女だ」
「…へ?」

おっと、これは非公式だったか?この際どうでもいい。
一人呆けたままの奴は放って置いて、俺はぬるくなった珈琲をすする。

「ホット・パンツが女…」
「残念だったな、ホモセクシュアルな展開じゃなくて」
「別にホモセクシュアルだろうがヘテロセクシュアルだろうがどっちだっていいの」
「うん?」
「キスは、したんでしょ」

あれをキスと呼べるのなら。しかしいい加減しつこいな。

「なまえ」

持っていたカップを置き、なまえの白い陶器のような頬を両手で包み、桃色の可愛らしい唇に口付けを落とす。
ちゅっとわざと音をたてて、触れるだけのキスをしてやる。
なまえは大きく目を見開き、顔を真っ赤にして俺を見上げたままでいる。

「キスってのは、こういう事だろ?」

突然の事で言葉にならないのか、頷くだけのなまえ。

「そこに愛がなくちゃ、例えどんな行為だとしてもそこに意味はないよな?」
「う、うん」
「わかってくれたようで俺はとても嬉しいよ」

なまえを胸に抱いたまま頭を撫でてやる。
きっと今俺がしたキスの意味の半分も理解していないだろう。

あぁ、可愛い俺の阿呆な子!








(2011.9.7)




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