おねがいひとつ

「また負けた〜!」

コントローラーをクッションに放り投げそのまま後ろに倒れこむ。

「はい、これでなまえちゃん13敗目ね」
「ううっ…花京院さん強すぎですよ!」
「うん、まぁ相当やり込んだからね」

にっこり微笑む花京院さん。王者の余裕を見せつけられた。
私だってゲーム苦手ってわけじゃないのに…。

「悔しい!花京院さん、もう一回!」
「いいよ、喜んで」



10分後、そこには13敗目と全く同じ行動をする私の姿があった。



「また負けた〜!」
「でもなまえちゃん、今回はなかなか良い線いってたよ?」

そう言って花京院さんは私の頭をよしよしと撫でる。
でも、私は気付いているのだ。

「花京院さん、手加減してくれてますよね」

頭の上で花京院さんの手がピタリと止まった。

「そんな、事は…」

花京院さんの目が私から逸れ宙を彷徨いだす。

「いいんです、花京院さん。本当の事言ってください」
「…ちょっとだけ、してるかな」
「やっぱり!花京院さんが手加減してくれてるのに勝てない私って!」

自分で聞いておいて落ち込む私はただの性が悪い酔っ払いだった。

「ほ、ほら!次はなまえちゃんの得意なゲーム選んでいいから!」

一人落ち込む私を哀れに思ったのか、そんな提案をしてくれた。
その話に、私は俯いてた顔を少し上げ花京院さんを見つめる。

「いいんですか?」

花京院さんが笑顔で頷く。

「うん。もし僕が負けたらなまえちゃんの言う事一回聞くよ」
「…あのお店のケーキが食べたい、とかでもいいんですか?」
「そんな事、お安いご用だ」
「その話、のりました!」

ガバッと勢い良く顔を上げる。

実は前から行きたいところが一つ。
つい先日、駅前に出来た洋菓子屋さん。
私一人では入りづらく、遠くから眺めているだけだった。
でも花京院さんとなら入れる気がする。
花京院さんとケーキ、うん、全く違和感なし。
憧れのお店に行けるとなると俄然やる気が湧いてきた。
この勝負、負ける訳にはいかない。
絶対に、花京院さんと、あのお店に行くんだ!


「じゃあ次のゲームはこれで!」
「フフッ、負けないよ?」
「私だって、負けません!」


運命の15戦目、勝つのはどっちだ




(そういえば、花京院さんの言う事も…)
(もちろん聞いてもらうよ、キッチリ14回分ね)
(やっぱりそうですよね)








(2011.8.24)
相互記念で透過様に捧げます。
ご本人様のみ持ち帰り可です。




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