10.図書開封
「…想像していた書庫と違う」
「そんなに違いましたか?」
ジョルノ君はさも当然、みたいな顔してるけど。
「いやもうこれ書庫と言いますか…」
「ちなみに、隣の部屋にも続いてます」
「最早図書館レベルですか!」
ブランドー家には書庫がある、という話を聞いて、ジョルノ君に頼みこんでお家にお邪魔しているわけだが。
まさかここまで広かったとは…。
さすが町内一大きい家を持ってるだけはある。
ジョナサンの家もかなりのものだけど。
「うわぁ…洋書から和綴じの本まであるよ」
見るからに古書っぽいのもある。DIOさんって本当何してる人なんだろ…。
「じゃあ僕はテレンスにお茶の準備をお願いしてきます。気になる本があったら手にとってくれて構いませんよ」
「いいの?」
「えぇ、もちろんです」
にっこり笑うジョルノ君。天使だ…。
ちょっと待っててくださいね、とジョルノ君は言い残して部屋を出る。
一人残された私は、本に囲まれた部屋を探検してみる事にした。
金箔で装飾された本、歴史的価値があるであろう古書、さらには羊皮紙まで…。
そして意外にも日本の作家を集めた棚もあった。
夏目漱石に川端康成、芥川龍之介、おぉ…これは…
「江戸川乱歩!」
しかも改訂前の全集だ。既に市場には出回ってない。
なんて素晴らしい!一生かけてもここにある本は読みきれないだろう。
思わずポロリと言葉が洩れる。
「はぁ…本に囲まれて幸せ…ここに住みたい」
「なら住めばいいだろう」
「え!?」
まさか独り言に返事が返ってくるとは思ってもいなかった。
あわてて振り向くと、すぐ後ろにDIOさんが立っていた。いつからそこにいたのだろう。
「でぃ、DIOさん!お邪魔してます!」
「あぁ、おはようなまえ」
DIOさんは寝起きらしく、光が眩しいのか目を細めている。
「おやすみのところ騒いでしまってごめんなさい、煩かったですか?」
「そろそろ起きようと思っていたところだ。なまえのせいじゃあない」
そう言いながらDIOさんは私の頬に手を添えてきた。
「さっきの話、別に私は構わんぞ」
「え?さっきのって…」
「なまえがそうしたいのならこの家に住むといい。部屋なら腐る程ある」
そりゃあこんな広い家に3人だけで住んでれば部屋も余ってるだろうけど…。
ってそうじゃなくて!
「で、でも、急にそんな事言われても…」
「理由が必要か?なら…」
「私とけっこn」
「無駄ァ!!」
「うりぃ!?」
私に覆い被さるようにいたDIOさんが派手に吹っ飛んだ。
「まったく、油断も隙もない…。大丈夫でしたか、なまえ。何か変な事されませんでしたか?」
「う、うん、何もないけど…DIOさん大丈夫なの?」
「あの人は殺したって死なないんですから大丈夫です」
DIOさんが崩れてきた本に埋もれて何やら呻いている。あ、生きてる。
「パードレの事は放って置いて、なまえ、お茶にしましょ」
ジョルノ君が私の手を取ってずんずん歩き出す。
…今度DIOさんに会う事があったら謝っておこう。
そうして私達は書庫をあとにした。
DIOさん、寝起きで意識が朦朧としてたのかな?
(でも、僕も賛成ですよ)
(へ?)
(この家に住む事、です。その気になったら言ってください。歓迎しますよ)
(この子もいつから聞いてたんだろ…)
(2011.8.22)
DIOさんちの書庫と家はばかでかい。
無駄親子とディエゴで三つ巴してればいいよ。