09.きみがため

「ジョセフさん、いらっしゃいませー」
「よっ、なまえ!」

開店して間もなく、ジョセフさんが来た。
朝一に来るとは珍しい。

「で、ピンクダークはもう出てる?」
「やっぱりそれ目当てですか」

ピンクダーク、とは今大人気の漫画だ。
作者がこの杜王町に住んでいるらしく、かなり売れ行きが良い。
シュトロハイムさんからの指示もあって、新刊が発売される時はいつも、
コミック売り場がピンクダークの少年一色になる。
(これがなかなか評判が良い)
ジョセフさんは、その"ピンクダークの少年"の大ファンなのだ。

「どうせ来るだろうと思ってたので、ジョセフさんの為に一冊用意しておきました」
「さっすがなまえちゃん!気が利く〜ッ!」

ピンクダークの少年を持った手をそのままぎゅっと握られる。

「俺、ピンクダークの少年大好きなんだよねぇ〜」
「えぇ、おもしろいですもんね」
「!え、もしかしてなまえも読んでるの!?」
「読んでますよ。言ってませんでした?」

Oh my god!とジョセフさんが声高に叫ぶ。

「こんな身近に仲間がいたとは!てっきりなまえはミステリーにしか興味がねぇのかと思ってた!」
「ミステリーは確かに好きですけど、漫画だって読みますよ」

一応、書店員ですから。
話題書には目を通しておくものです。

「家で俺以外漫画読む奴なんていないから語れる仲間が欲しかったのよぉ〜!」
「あ、そうなんですか?」

意外。仗助君とか読んでそうなものなのに。

「仗助は漫画よりゲームなんだよ」

言われてみればこないだゲームの攻略本探しにきてたっけ。

「くぅ〜ッ!こんな近くに仲間がいるなんてラッキー!」
「えぇ、私も嬉しいです。今度いろいろ話しましょうね」
「マジで!?俺嬉しくて泣いちゃう!」

ご丁寧に泣きまねしてみせるジョセフさん。
まったく、調子が良いんだから。
でも正直、好きな事を話し会える人って大事だと思う。

「さて、そろそろ客が来始めるだろうから帰るか」
「あ、もうこんな時間ですか…」
「なまえと喋ってるとあっという間だな。また今度ゆっくり茶でもしながら話そうぜ」

じゃあ、お仕事頑張ってねーん!

それだけ言うと、ジョセフさんは帰って行った。

…あれ?ピンクダークの少年買うの忘れて行っちゃった…。




(いっけね、買って帰るの忘れてた!)
(ジョセフさん、ドジっ子だったんですね)








(2011.8.20)
ジョセフの口調がいまいち掴みきれない。
ジョセフは主人公ちゃんと話したいが為に来ただけ。
ピンクダークの少年は建前。ごめん露伴ちゃん。




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