08.エメラルドグリーンの恋

新刊の仕分けをしていると、ある一冊の本が目についた。
どうやら若手画家を集めて特集を組んだ書籍のようだ。
私が惹かれたのはその表紙を飾っている一枚の絵。

「すごい…綺麗…!」

芸術方面に全く才能のない私でも、心奪われてしまうぐらいに。
見ていてとても温かい気持ちになる絵だった。
この絵の素晴らしさが言葉で言い表せないのがもどかしい。

もう少しじっくり眺めていたかったけど、表でドアの開く音がしたので、
私は慌ててバックヤードから顔を出す。

「いらっしゃいませ…て、なんだ承太郎さんでしたか」
「…てめーは相変わらずだな」

来店されたのは承太郎さん、と、後ろにいる人は…?

「承太郎さんのお友達?」
「ん?あぁ、なまえは会うの初めてか。腐れ縁ってやつだ」
「花京院典明です。初めましてなまえちゃん」

承太郎さんの後ろから現れたのは、ピンク色の髪の毛をした人だった。
髪の色は奇抜だけど、優しそうな人だ。

「初めまして、花京院さん。みょうじなまえです」
「なまえちゃんの話は承太郎からいろいろ聞いてるよ」

いろいろってなんだ、いろいろって。
非難の目で承太郎さんを見ると、

「ところでなまえ、おめぇが持ってるその本はなんだ?」

とあからさまに話題を逸らした。あとで問い詰めてやろう。

「あ、これですか?新刊の書籍なんですけど、表紙の絵がすごく素敵で…!
誰が描いたのか気になってたところなんです」
「表紙?あぁ、誰が描いたって、これは…」
「え!承太郎さん、この絵を描いた人知ってるんですか!?」

意外!承太郎さんは海洋生物にしか興味ないと思ってたのに!
なんて失礼なことを思っていると、花京院さんが尋ねてきた。

「なまえちゃん、その絵気に入ったの?」
「はい!なんていうか、言葉では言い表せないのですが…一目惚れしました!」
「おいおい、それは言いすぎだろ…」
「そんな事ありませんー。早く画集出ないか、今から楽しみです」

出たら絶対買おう、そう心に決めた。



「一目惚れ…ね。フフッ」
「おい、花京院…?」
「承太郎、悪いけど僕は先に帰るよ。創作意欲が湧いてきたんだ」

それに、なまえちゃんにも会えたしね。



「それじゃあなまえちゃん、またね」

花京院さんの声でハッとする。
いけない、妄想の世界に入ってた。

「もうお帰りですか?またいつでもいらして下さいね」
「うん、ありがとう。承太郎もまたね」
「…おう」

そう言うと花京院さんは踵を返し、手を振って店を出て行った。


しっかし、この"テンメイ"さんの絵は本当に素敵!




(で、承太郎さん!このテンメイさんってどんな人なの!)
(…さくらんぼの食い方が変な奴だな)








(2011.8.19)
典明かわいいよ典明。
花京院は画家。だといいなぁ。
で、承太郎は何しにきた。




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