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「申し訳ない。これはすまぬことを致した」
謝罪を述べるのは銀時の肛門を攻撃した男、この寺の和尚だ。 泥棒ではないことを話せば、居間へ通してくれた。
「だがそちらにも落ち度があろう。あんな所で人の家をのぞきこんでいては…」
「スイマセン。ちょっと探し人が…」
「探し人?」
「ええ。和尚さん、この辺りで恐ろしい鬼の面をかぶった男を見ませんでしたか?」
「鬼?これはまた面妖な。では、あなた方はさしずめ鬼を退治しに来た桃太郎というわけですかな」
「三下の鬼なんざ興味ねーよ。狙いは大将首。立派な宝でももってるなら別だがな」
「宝ですか…しいて言うならあの子たちでしょうか」
突然、目の前に現れた鬼道丸に弥生をのぞく二人は驚いて後ずさる。
「てっ…ててて、てめーどーゆうつもりだ?」
「アナタ方こそ、どーゆうつもりですか?闘技場から私をつけてきたでしょう」
「え!?え!?ホントにじゃ、和尚さんが!?」
「私が煉獄関の闘士、鬼道丸こと…道信と申します」
「おねーちゃんっ」
木へ寄り掛かり、心地良い風にうつらうつらとしていると、近くで聞こえた幼い声に顔をあげる。 そこには囲むようにして子供達が弥生に群がっていた。
「ねェ、おねーちゃんもこっち来て遊ぼ!」
『…やだ。疲れる』
「すげー!これ刀ホンモノ?ねーちゃん侍かよ!」
『…一応』
「おねーちゃん達何しに来たの?先生のお友達?」
『……ね、あの人』
弥生の視線は子供達から銀時と話している道信へと移る。 つられて、子供達も道信へ目を向けた。
『あの人…どんな人』
「先生?先生はね、すっごく優しーんだ!」
「俺達と毎日遊んでくれるし、飯も食わしてくれる」
「僕ら…親に捨てられたんだ…先生が来なかったら、きっと死んでた」
「だから先生にはすごく感謝してる。ここには先生がキライな奴なんていねーよ」
「みんな先生大好きなんだ!私たちの自慢のおとーさんだよっ」
まるで花のように笑って女の子は言った。彼女だけではない。 此処にいる子供達は皆、笑顔だ。 子供達にとって、道信は全て。 そして道信にとってもまた、子供達が全てだろう。
かつて自分が、そうだったように―――。
『…そう。優しいおとーさんだね…』
「オイ、帰るぞ」
そう呼びかけられ、弥生は立ち上がる。 歩き出そうとした時、一人の女の子に裾を引っ張られた。 どうやらしゃがんでほしいようだ。
『……何』
望みどおり膝を曲げてやれば、女の子は弥生の頭に花で造った冠を乗せた。
「私がつくったの、おねーちゃんにあげる!」
『…ありがと』
「ねぇ、また遊びにくる?」
『気が向いたらね…』
微笑し、女の子の頭を一撫ですると弥生達は道信の寺から去って行った。
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