もう何回階段を下っただろうか。明らかに雰囲気の悪い場所に顔をしかめる。
「オイオイどこだよココ?悪の組織のアジトじゃねェのか?」
「アジトじゃねェよ、旦那。裏世界の住人の社交場でさァ。ここでは表の連中は決して目にすることができねェ面白ェ見せ物が行われてんでさァ」
着いた場所は天人で溢れ、歓声が止むことのない地下闘技場だった。 観客の視線の先は中心で対峙している男二人へそそがれている。
「煉獄関…ここで行われているのは」
男達は同時に駆け出す。刀と金棒が、甲高い金属音を奏でた。
「正真正銘の、殺し合いでさァ」
そして刀を握っていた男が、首から血を吹き出すとともに絶命した。
《勝者、鬼道丸!!》
鬼の面を付けている男へ、一際大きな歓声が起こった。
『………』
「こんな事が…」
「賭け試合か…」
「こんな時代だ。侍は稼ぎ口を探すのも容易じゃねェ。命知らずの浪人どもが金ほしさに斬り合いを演じるわけでさァ。真剣の斬り合いなんざそう拝めるもんじゃねェ。そこに賭けまで絡むときちゃあ、そりゃみんな飛びつきますぜ」
「趣味のいい見せ物だなオイ」
「胸クソ悪いモン見せやがって、眠れなくなったらどーするつもりだコノヤロー!」
「明らかに違法じゃないですか。沖田さん、アンタそれでも役人ですか?」
「役人だからこそ手が出せねェ。ここで動く金は莫大だ。残念ながら、人間の欲ってのは権力の大きさに比例するもんでさァ」
「幕府も絡んでるっていうのかよ」
「ヘタに動けば真選組も潰されかねないんでね。これだから組織ってのは面倒でいけねェ。自由なアンタがうらやましーや」
醜い歓声に弥生は目を細めると、踵を返し出口へ向かう。
「弥生ちゃん?」
『うるさいトコ…嫌い』
新八にそう答えた後、弥生は闘技場から出て行った。
「…意外と解りやすいんですねィ」
「………」
狭い路地で待つこと数分、出て来た三人と合流すると早速行動を開始する。 目を付けるのはあの闘技場で無敗を誇る鬼道丸という男。 気取られぬ様気をつけながら四人は鬼道丸を尾行する。
「あの人も意外に真面目なトコあるんスね。不正が許せないなんて。ああ見えて直参ですから、報酬も期待できるかも…」
「私、アイツ嫌いヨ。しかも殺し屋絡みの仕事なんてあまりのらないアル」
「のらねーならこの仕事おりた方が身のタメだぜ。そーゆー中途半端な心構えだと思わぬケガすんだよ、それに 狭いから…」
今、銀時達は駕籠で移動中だ。中は無理に四人納めた感じになっている。
「銀さんがいくなら僕達もいきますよ」
「私たち四人で一人ヨ。銀ちゃん左手、弥生胴体、新八左足、私白血球ネ」
「全然完成してねーじゃん。何だよ白血球って、一生身体揃わねーよ」
呆れながら銀時は外へ顔を出し、飛脚に声をかける。
「オイ!何ちんたら走ってんだ、標的見失ったらどーすんだ!!」
「うるせーな、一人用の駕籠に四人も乗せて早く走れるか!!」
「あん?俺たちはな、四人で一人なんだよ。俺が体で弥生が内臓、神楽が白血球、新八は眼鏡」
「眼鏡って何だよ!ってゆーか眼鏡かけてんの?どーゆう人なの」
「基本的には銀サンだ。お前らは吸収される形になる」
「嫌アル、左半身は神楽にしてヨ!」
『ぎん…24時間以上は睡眠取ってね』
「寝過ぎ!!弥生ちゃん人生なんだと思ってんの!?」
『人生とは睡眠なり』
「何もうまくないからね!?誰一人として共感しないからね!?」
『理想はオリンピックの時だけ起きる事…最高だよね…』
「んな事になったらオメーこの話載る度に四年後っつーことになってんぞ。気付いたら俺達皺くちゃだ、玉手箱もねーのに」
「大丈夫アルヨ銀ちゃん!弥生と四年に一度だけしか遊べないなんて私が嫌ネ!これからも弥生起こす係は私に任せるヨロシ」
「ああ、そーしてくれ。とことんソイツの惰眠を邪魔しまくれ」
『理想と現実って遠いね…新八』
「いや、僕に同意を求められても…あ!止まりましたよ」
銀時達の乗る駕籠の先にも、もう一つの駕籠。 降りたのは鬼道丸だ。見失わないよう、四人は後を追っていくと人気のない場所に廃寺が建っているのを発見する。
その廃寺からは悲鳴のようなものが聞こえた。
銀時は三人を残すと廃寺へ向かう。 ゆっくり、障子を開けば飛び込んで来た光景に目を見開いた。 何故なら、中では子供達が無邪気にはしゃいでいたからだ。
「こいつァどーゆうことだ?」
目に映るものに気をとられすぎて、銀時は気付かなかった。 背後に立つ男に
「どろぼォォォ!!」
そして肛門に強烈な一撃を食らったのだった。
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