「銀さん、やっちゃったもんは仕方ないよ。認知しよう」

「結婚はホレるより、なれアルヨ」

『お幸せに』

「オメーラまで何言ってんの!みんなの銀サンが納豆女にとられちゃうよ!冗談じゃねーよ。俺が何も覚えてねーのをイイことに騙そうとしてんだろ?な?大体、僕らお互いの名前もしらないのにさ、結婚だなんて…」

「とぼけた顔して…身体は知ってるくせに。さァ」

「イヤなこと言うんじゃねーよ、それからソレ銀サンじゃねーぞ!」


女は定春に話しかけていた。
目を擦り、メガネがないとダメだと呟くことから視力は悪いみたいだ。
と、女から着信音が鳴り出した。スリッパで応答する女に頭が無事か心配になった一同。
今度はちゃんと携帯電話を手にし、自らをさっちゃんと名乗っている。
ようやく女の名前が分かった次第だ。


『…まだ時間早い…おやすみ』

「イヤイヤ、おやすみじゃなくてさ。本っっっ当にいいの?銀サンが人のものになっていいの?」

「いつまで言ってんですか。責任取るのが男でしょうが」

「責任取るもなにも無いもん。記憶が。てゆーか、マジでいなかったよね?弥生」


己の無実を晴らす証人は銀時の心境など無関心のようで、また寝るべく寝室へと向かっていた。
部屋は布団が敷いてあるが、所々に木材や瓦の破片が散らばっている。
その中には額縁のメガネも落ちていた。


『新八、メガネ落ちてるよ…』

「いや、僕のメガネはちゃんと掛かってるよ」

「違うヨ弥生、これは新八の弟アル」

『弟…いたんだ』

「何びっくりした顔してんの。おかしいだろメガネが弟って。コレきっとさっちゃんさんのじゃない?」


確かに、メガネが…などと言っていた。
紋付袴姿に着替え、覚悟を決めた銀時を連れて出て行くさっちゃんへ新八は急いでメガネを渡しにいく。


「弥生、穴があるヨ」


ふと、袖を引っ張り、天井を指さす神楽に弥生は仰ぐ。そこには流れる雲と青空を覗かせる穴が出来ていた。
神楽に呼ばれた新八も、その穴の存在に気付く。
そして気付いた事がもう一つ。


「やっぱ、あんなダメ人間を婿にもらおうなんて考える人はいないよね」

「分からないアルヨ。世の中には物好きという人もいるってマミー言ってたネ」

『…眠い、おやすみ…』









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