新八は今ピンチだった。銀時と神楽のバイクは転倒し、運転する妙は総長のズラを取ってしまった事で気絶中。さらには敵方の一人はチーム一最速のスピードを出す奴だったらしく、現にその姿は遥か先だ。 ダメかもしれない…そう諦めかけた時だった。
「そっ、総長ォォォ!!すんげェスピードで追ってくる奴がいます!!」
「なにィ!?」
「!弥生ちゃん!?」
それは新八の言うとおり、弥生のバイクだった。 ハンドルを握り、頭を垂れる彼女は
「寝てるゥゥゥ!!?」
「だから言わんこっちゃねェェ!!」
そう、寝ていた。どうやら風圧に耐えられず閉じていた目がいつしか夢を見るように。 その状態のまま新八の横を風のように過ぎて行く。
「なんだあの娘ォ!死ぬ気か!?」
「起きて弥生ちゃァァァん!!そのままじゃ200%事故るからァァァ!!!」
叫ぶも新八の声が届くことなく、爆睡中の弥生を乗せたバイクは見えなくなった。 そして案の定、先を走っていた敵方のバイクと衝突。所謂玉突き事故をしでかした。
弥生が事故を起こした頃、新八のもとにリアカーを引く神楽が追い付いてきた。
「ムハハハハ、暴走族がなんぼのもんじゃい!こちとら人生という道を暴走しとんのじゃい!格の違いを見せたれェ銀ちゃん!」
神楽の言葉に荷台の布から銀時―――ではなく、焼酎持った白髪のホームレスだった。
「誰だそれェェェェェ!!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙銀ちゃんがァァ!だからお酒ひかえろって言ったのよォォ!!」
「酒のせいじゃねェ、悪いのはお前の頭だァァ!!」
「フハハハ、お前ら暴走族なんかより漫才師になった方がいいんじゃねーの?」
「そーかい。お前の方がむいてそうだけどな!その頭の飛び道具は使えるぜ」
総長に答えたのは彼の後ろに乗る銀時だった。 神楽が注意を引き付けているうちに乗っていた人物を落としたのだ。
「…このまま必殺、侍ジャーマンスープレックスをきめて地獄に送ってやってもいいが、それじゃ新八の心意気に水をさす。こっからは正々堂々ウチの大将とやりあってもらおうじゃねーか。 新八、一丁キメてこい」
突然、馬は急に止まると前足を上げ出し、乗っていた二人は地面に落下した。 何事かと馬を見れば、少し先にいる血まみれの弥生のもとへと寄っていた。
「事故ったな?事故ったんでしょ、ねぇ」
『………ちげーし』
「弥生すごいネ。頭から噴水出せるアルか」
「真っ赤だけどな」
新八も無事バイクから降りると、腰をさすりながら銀時が口を開く。
「こっからはてめーらの足で勝負だ」
「走るんですか?」
「ああ、そうだ」
「走るだァ?オイオイ…こっからどれだけ距離があると…」
「はいよォーい、どん!」
有無を言わさずに銀時は声をあげると新八はすぐに走り出し、その後を総長も慌てて追いかけて行った。
「あとは新八次第だな」
『疲れた…もう帰って寝よう…』
「ああ、そうだな。その噴水止めてからな」
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