結局、銀時の記憶は戻ることなく、今日はもう帰ろうと家の前までやって来た四人。だが道を塞ぐように人が混み合っている。疑問はすぐに視界に入った光景で理解できた。
帰るべき家は宇宙船が墜落し、全壊に近い形で崩壊していたのである。


『……ら』

「!弥生ちゃん…?」


体を震わせる弥生に新八は声をかけると


『私の枕ァァァァァ!!!』

「家が破壊された事に嘆けェェ!!」

「あっ、弥生!今行っちゃダメヨ!」


神楽の制止を聞かずに駆け出す弥生。だが銀時に腕を掴まれた事で、それ以上進む事は叶わなかった。


「危ないです。今は近づくべきではありません」

「アッハッハッハッハッすみまっせ〜ん」


笑いながら謝るのは家を破壊した人物、辰馬だった。
当然、宇宙船を操縦していた辰馬は役人に連れて行かれ、御用となる。


「…どうしましょ。家までなくなっちゃった」

「……もういいですよ。僕のことはほっておいて」

「「!!」」

「みんな帰る所があるんでしょう?僕のことは気にせずに、どうぞ自由になってください」


銀時の言っている意味が分からない。その意で新八は彼の名を呼ぶ。
すると彼は、ここに残る理由も住まいも、記憶もなくなった今、生まれ変わったつもりで生きていくと言い出す。


「だから、万事屋はここで解散しましょう」


そして衝撃的な事を口走った。


「ウ…ウソでしょ、銀さん」

「やーヨ!私、給料なんていらない、酢昆布で我慢するから!ねェ銀ちゃん!」

「すまない、君達の知っている銀さんは
もう僕の中にはいないよ」

「銀さん、ちょっと待って!」

「無理ヨ!オメー社会適応力ゼロだから!バカだから!」


徐々に離れていく距離。それを埋めるように弥生は駆け出し、銀時の着物を掴めば、彼は足を止め、弥生に視線を向ける。


『…ぎん、』


言いたい事はある。だがどうやって言葉にしていいのか分からず、喉につまる。
強く、袖を握る手に力をこめると


「…何故でしょうね…君を見ていると、胸がひどくざわつくんです」


銀時は自身の胸に手をあてると、俯く。


「けど…やはり何も、思い出せないんです」


スルリ、と、呆気なく弥生の手から袖がすり抜ける。
銀時を呼ぶ新八と神楽の声が木霊する中、ただ、弥生は銀時の背中を見つめる事しか出来ないでいた。










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