BABY ALONE IN BABYLON 5


 それからの誠人の生活は目まぐるしく変わっていった。


 朝は(…と言っても世間では昼近い時間だが)、目が覚めると先ずは猫の世話から。ご飯と水を用意した後、猫のトイレ掃除。
 それを終えてから洗濯機を回し、その間に食事の用意をする。幸成が起き出してくる頃には洗濯物を干し終えて、部屋の片付けと掃除を済ます。
 先輩と暮らしていた頃から家事は出来ていたので、苦痛に感じることはなかった。


 そして店に出る前に和泉から頼まれていた物の買い出しをして出勤。そしてまた、店内の掃除から夜が始まるのだ。
 先輩に会えなくなって悲しいという気持ちは確かにあったが、やらなければならないことが沢山押し寄せてくる毎日に泣き言を言ってはいられなかったし、何よりひとつずつでも仕事を覚えていくことが楽しくもあった。


 お客様に名前を覚えて貰えたこと。初めて作ったカクテルをなかなかだと誉めて貰えたこと。初めは自分を警戒していた猫が懐いたこと。
 そして、余計なことは何一つ言わないオーナーの振る舞いが何よりも有り難かった。


 そんな忙しい毎日を送り始めたある日、店にあまり見かけないタイプの人間が現れた。
 ひとりはピシリとスーツを身に纏い、短めの黒髪を整髪剤で撫で付け、まるでどこかのエリートサラリーマンといった風情の男。
 そいつが連れていたふたりの男がまた個性的で、ひとりは長い手足に派手な柄と色を組み合わせた服装で、長めの茶髪を後ろで無造作に結んだ遊び人というか、何をしている人間なのか全く解らない雰囲気。
 もうひとりは、もっさりとした太目の体つきに、これまたもっさりと盛り上がった黒髪。黒縁メガネに迷彩柄のジャンプスーツを着ていて、もし身近に居たら目を逸らせてしまうタイプの男だ。


 その日は金曜日。


 早い時間に現れた三人は慣れた様子でカウンター席に座ると「ユッキーいないの?」と和泉に話しかけた。
 和泉はすぐに呼びますよと返事をすると、どこかへ電話をかけた。


「あの、ユッキーって、もしかして…」
「ん? ああ、オーナーのことだよ。あ、そうか、誠人君、皆さんとは初めてだったね。こちらはオーナーのお友達…というか、仕事仲間って言ったほうがいいのかな」


 カウンターに並んだ個性的な面々に驚きながら、誠人がおずおずとおしぼりを差し出していると、和泉が簡単な紹介をしてくれた。
 三人は大学時代からの友人で、現在は服や雑貨の販売会社を皆で立ち上げ経営しているのだという。
 しかしながら、三者三様の服装や雰囲気から、一体どんな洋服を販売しているのか皆目検討がつかない有り様だった。
 それを細かく訊くのも失礼なような気がして、誠人はおとなしく飲み物のオーダーを取ることに努めた。


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