お洒落眼鏡で素敵に変身


 無理矢理という感は否めないが、立花君をデートに誘い出すことに成功しました。デートもデート。お買い物。しかも勿論、眼鏡をね。
 お元気ですか?藤田悠貴です。

 ふたりのオフが偶然重なったと立花君は思っているようだけれどね。
 シフトチェンジしましたから。似合わない眼鏡をかけるはた迷惑なバカ店長と。なんて優しいんだ俺は。

 通勤時間をとうに過ぎた午前11時の山手線は、それでもそれなりに混んではいたが。晴れ渡る青空が今日の良き日を喜んでいるみたいじゃないかね、立花君。

「俺は晴れ男だからな」
「俺もです」
「それは凄いな」

 凄いと誉めてやったのに、不思議そうな顔をするとは何とも遺憾しがたいぞ。ダブルで晴れ男ならば、こんなに凄いことはないだろう?

 駅の改札を抜けて、すぐ近くにある有名眼鏡ショップへ直行。
 駅周辺には最近台頭してきた激安の眼鏡ショップがあるが、結局は中国やタイ、カンボジア辺りでの大量生産品だ。その国を差別するつもりはないが、やはり国産が一番だろう。間違いのない職人が作る一点ものだとか。

 店の入ると、きちんと接客教育を受けた従業員がにこやかに挨拶してくる。
 明るすぎず、でしゃばらず、堅苦しくもない穏やかさで。
 どこのお店でもフレンドリーを勘違いして、馴れ馴れしい接客をする輩が増えているから、こうした当たり前の接客にホッとする自分を感じる次第だ。

「藤田サン、デザインがありすぎて選び方がわかんないですよ」

 任せたまえよ。そのために俺がいる。
 従業員には申し訳ないが、パソコンに顔画像を取り込んで似合うデザインをシミュレーションするよりも、俺が店内を回って幾つかピックアップするほうが早い。
 立花君は面長で額が広いから、はっきりした形のデザインが基本だろう。
 丸いものより四角。ある程度の大きさがあっても、眼鏡に負けてしまうことはないと見た。
 選んでいる間に視力チェックを受けさせて。
 4、5本選んで、鏡の前でかけさせる。

 クラッシックな黒フレーム。太めのツルに横に幅広いグラス。額が広い奴に良く似合う。普段使いに良さそうだ。
 ノンフレームで少しだけ角が丸いグラス。男っぽい顔が優しく見える。
 シンプルな銀フレーム。理知的だな。でも少し堅苦しいか。
 柔らかい色合いのプラスチックフレーム。カジュアルに決めるなら、色違いで2本あると便利だ。
 職人が作った一点もの。磨きも素晴らしいが、ちと高い。一生ものとしたら安い買い物か。

「どれがいいんだ、立花君」
「やっぱりこれかなあ」

 手にとったのは最初に選んだ黒フレーム。
 そうだろう!俺のセレクトに間違いはないのだよ。
 面長で、ある程度広い額。するりと伸びる鼻梁。黒髪を立たせた柔らかい雰囲気の立花君が、少しだけ引き締まった感じになるのがいい。

「で、これって藤田サンからのプレゼントですか?」
「身銭を切ってこそお洒落眼鏡の仲間入りだぞ、馬鹿者め」
「そんな〜」
「食事は奢ってやっても構わん」

 ぶうぶう文句を垂れながらも、何故か、お洒落眼鏡男子の仲間入りが決まってしまった立花君。コンタクトはどうするんでしょうか?

 決して安くない眼鏡を自分で買う羽目になった立花君。
 流されやすい彼の明日はどっちだ!

「ああ、ここだ!立花君」
「これはエレベーターの扉です」
(しかもデパートの)


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