眼鏡道の心得


俺こと、藤田悠貴は変態である。

 いや、正確に言うならば『フェチ』というやつだろうか。
 ある特定の物に対して、マグマの如く吹き上がらんばかりの情熱や、何を持ってしても優先してしまう愛情を持っているのだ。

 誰にでも無条件に好きになってしまう物があると思うのだか、どうやら自分の場合、その感情が異様に偏っていて異常に強すぎるらしい。
 自分としては極々普通の状態だと感じているのだが、世間一般の価値観からすると俺は『変』なのだ。
 俺からするならば、そこまでの愛情を持てない状態は不幸だと思うのが。
 はて、そういう考え方は間違っているのだろうか。

 世間一般でいうところの『変』な俺が、世間一般の価値観から否定されながらも心血を注いでいる物。
 それは眼鏡である。

 アニメ好きな方々が喜ぶロリータ猫耳眼鏡っ娘メイドを否定はしないが、混同されるのは、些か俺の内にある『眼鏡道』への冒涜と言えよう。
 それに俺は眼鏡っ娘よりは眼鏡男子の方が好きであるし、変態は、変態らしく紳士であらねばならぬのだ。
 
 ロリータという性的嗜好は仕方ないものなのかもしれないが、やはり犯罪の匂いがしてしまう。
 変態は犯罪者と似て非なるもの。全く違う生き物なのだ。一緒にされては困る。

 世間一般市民に迷惑を掛けないのは基本中の基本であり、罪を犯した時点で其奴は『変態という名の栄冠』を一生失うことになるのだ。
 変態には変態なりのプライドがあるってことを理解して欲しい。


 俺は眼鏡が好きだ。
 眼鏡を眺め、眼鏡に触り、眼鏡を愛でて、眼鏡に癒される毎日。
 眼鏡の似合う人間をこっそり眺め、出来ればお近づきになりたいと思いながら、迷惑を掛けてはいけないと自分を律し、たまに眼鏡専門店に出掛けては、眼鏡知識や流行のデザインなどの情報を仕入れ、うっかり店員サンと仲良くなってしまう…そんなパラダイスな俺の日常。

 そんな俺を変態と呼ぶ奴に言いたい。
 一度でいいから眼鏡をかけてみろと。
 幼い頃、視力が良いくせに眼鏡をかけてみたいと思ったことがある奴は手を上げてみろと。
 世の中に伊達眼鏡が存在する以上、世間一般の皆さんにだって眼鏡への微かな憧れがあるはずなのだと。

 俺こと、藤田悠貴。
 眼鏡大好き変態野郎である自分に、今確かな誇りと気概を感じつつ、この演説を終えたいと思う。
 長々とお時間を取らせてしまい失礼しました。
 今一度、眼鏡という素敵な魔法アイテムについて、ほんの少しでも心の片隅にでも置いてください。

 ご静聴、ありがとうございました。


[*前] | [次#]
[目次]



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -