短文描写 2
65文字/40題
本/夢/女と女/手紙/信仰/遊び/初体験/仕事/化粧/怒り…
11.本
窓辺から射し込む光がページをめくる君の指先を照らす。優しく紙をなぞりながら、時折、笑みを浮かべて。
何が見える?
文字の向こうにある君の世界は。
12.夢
海の底の岩場で身を寄せ合い、ポコポコと言葉にならない泡をはきながら、ふたり魚になる夢を見た。
ひとり目覚める真夜中は、こんなにも切ない。
13.女と女
二列に並んで楽しげに遠足へ向かう幼稚園生を見た。
ためらうこともなく繋がれた手のひら。
女と女。男と男。男と女。
誰もが人と人に過ぎない。
14.手紙
窓から吹き込む風に飛ばされた手紙の束。
散らばった白い紙から透けて見えるのはあの日の悲しみや切なさ。
好き、好き、好き…
それだけが苦しかった。
15.信仰
父と子と聖霊の御名において
食事の前に頭を垂れ祈りを捧げる君の姿は美しい。
揺らめく燭台の炎に照らされる横顔。
戒律なんてクソくらえだ。
16.遊び
どちらから読んでも同じ意味になる言葉を考えて、君へのバースディカードにしたためた。
プレゼントと一緒に贈るよ。
すきときめきときす
17.初体験
週末の混雑する通りを眺めていると流れに君を見つけた。
何百人、何千人いても君だけが浮かび上がるかのように見える。
駅前の待ち合わせも悪くないな。
18.仕事
キータッチする。ネクタイを緩める。ペンを握る。シャツの袖を捲る。肩を揉む。コーヒーカップを握る。眼鏡を外す。携帯を開く。
君の指先は忙しそうだ。
19.化粧
真っ赤な口紅をひいてカツラを被れば、そこには母親そっくりの顔があった。
無理矢理、口角を引き上げて笑ってみる。
母は僕に笑顔を見せなくて久しい。
20.怒り
電話の向こうから君の泣き声が聞こえる。実際に涙は流れていないけれど。
携帯を両手で抱きしめながら思う。
神様、なぜ僕達を作ったのですか?
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