さよならすら


 もう会えないとわかっていても、口にしたら全てが消えてしまいそうで別れの言葉が言えません。

 それじゃあ、またね。なんて嘘くさいにもほどがある。

 いつだって誰もが出会いと別れを繰り返して、最期には消えてなくなるというのに。頭でわかっていても心が拒否してしまいます。

 それじゃあ、またね。嘘くさいけど、これしか言えない自分がいます。

 最期に握った手のひらは、小さく細く壊れそうだった。その冷たさが切なかった。自分の持てる体温の全てを指先から注いであげたかった。

 全てはもう青い空にたなびく、白い煙になってしまったけれど。

 それでもやっぱり別れの言葉を口には出来ず、また会おうねなんてバカみたいなことを思った。本気で思った。


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