お逃げなさい
お逃げなさい
と、誰かが云う。
どこからどこへ、誰が何から逃げていくのかわからないけれど、取り敢えずの気持ちひとつ逃げることにしてみた。
ニッコリ笑う鏡の中はどうにも居心地が悪くて、するりと脱け出せばこんなにも楽になれるんだと知って驚いているよ。
あはは。
可笑しいね。
もうひとりの自分が、真っ赤な血を浴びて隣で笑ってるよ。
全ての罪はコイツに任せるとするよ。
僕は何にも知らないよ。
殺ったのはコイツ。コイツだよ。僕じゃない。
僕は普通の平凡な人間さ。
何であの人を?
知らないよ。なんにも知らないよ。
僕は男を好きになったことはないよ?
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