一重
彫刻刀で切れ長に刻まれたようなキミの瞳が、じっと遠くを見上げている姿を見たら哀しくなった。
校舎の屋上から見える超高層ビルの群れは、下半分が淀んだ空気に包まれているけれど、上半分は何やらすっきりとした青空が広がっている。
高い場所から空を見上げたって、星に手は届かないよ。
さらに、今は昼間で星は見えないんだからさ。
どんなに望んでみても、寿命ばかりは自分で決められないんだ。
だから、
泣かないで。
涙を見せずに泣かないで。
いつかは必ず向こうへ行くんだから。
それまではボクのそばにいてよ。
彼にはもう少しだけ、待っていて貰おうよ。
その切れ上がった瞳に、今、生きている証を映して欲しいんだ。
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