未成年
おあいにく様。
少年は鮮やかに笑ってみせた後、ひらりと身を翻してドアの向こうに消えて行った。
安っぽいピンク色の壁に嵌め込まれた白いドアが、乙女チックな思考の自分を嘲笑うかのようだ。
独りきりになったダブルベッドで痩せこけたカラダを晒しているのは、何て滑稽なんだろう。
ついさっきまで抱き締めていたものは、熱が醒めた途端に深い甘さを消し去って笑い声を上げたのだ。
おあいにく様。
ボクは未成年だからさ。
何をしても国が守ってくれるんだよ。
あなたは犯罪者になるんだよ。
ひとの財布を勝手に探ると、それじゃあねと楽しそうに立ち上がったキミ。
柔らかな夢を普通に手に入れることが出来る年齢をとうに過ぎてしまった自分に、キミの言葉は妙に胸を突く。
傷ついたりはしないよ。
そんな時期はとうに過ぎてしまったから。
ただ、またキミに会いたいと思う自分が、笑っちまうくらい切ないね。
大人なんてね、幼さを失っただけの臆病者だよ。
だからキミに触れたくなるんだ。
失ったものを取り戻すことなんて出来はしないと思いながら、懐かしさに涙するんだよ。
こんな自分を。
笑っておくれよ、少年。
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