青の群れ
賑やかな一団が高校の門をくぐり抜けて行くと、後には静けさと、ホッとしながらも何とも言い難い寂しさが沸き上がって来る。
若者は何であんなに瑞々しくて、愚かで可愛い生き物なのだろう。
遠い昔、自分もあの一団にいたのだということが懐かしくも信じられない心地がする。
「先生、好きです」
震えながら告白してきたキミを、少なからず愛しいと思ったのは事実だ。
でも、それ以上に私は私自身が可愛くて仕方なかったんだよ。
「若い時にはね、同性に憧れる時期があるもんだ。私にもあったよ。だから今の言葉は聞かなかったことにするよ」
そうやって何度も何度もキミから逃げて、自分からも逃げて、やっと迎えた今日という日。
誇らしげに背筋を伸ばして、旅立っていくキミに精一杯のエールを送るよ。
キミの将来を思えば、口が裂けても言えない言葉だってあるんだ。
「元気でな」
涙を堪えて笑うキミは誰よりも美しい。
世間の荒海に泳ぎ出す青年の群れよ。
キミ達に幸多からんことを。
見上げれば抜けるように真っ青な空。
プカリ、白い煙が流れて、静かに消えていった。
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