苗床


 一体何が実るのかわからないけれど、こうして温かな土に横たわっていると、何だか色んなことがどうでも良くなってくる心地がしてくる。

 決して広くはない庭の片隅に作られた苗床に俯せになりながら、遠い子守唄を思い出す。


 母さん。
 あなたの息子は何も生み出しはしませんよ。
 せっかく生んでくれたのに、ごめんね。


 程よい柔らかさの土に埋もれながら、あなたの帰りを待つ夕暮れ。


 花の苗でも植とくれ。
 土を被せたその後で。

 小さくて可愛い花がたくさん咲いたら、母さん、笑ってくれるかな。



[*前] | [次#]
[top]



×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -