苗床
一体何が実るのかわからないけれど、こうして温かな土に横たわっていると、何だか色んなことがどうでも良くなってくる心地がしてくる。
決して広くはない庭の片隅に作られた苗床に俯せになりながら、遠い子守唄を思い出す。
母さん。
あなたの息子は何も生み出しはしませんよ。
せっかく生んでくれたのに、ごめんね。
程よい柔らかさの土に埋もれながら、あなたの帰りを待つ夕暮れ。
花の苗でも植とくれ。
土を被せたその後で。
小さくて可愛い花がたくさん咲いたら、母さん、笑ってくれるかな。
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