やぶれ障子


 指先をぺろりと舐めて、濡れたソレを障子に刺す。

 じわっと紙が溶けて、ふつ、と穴が開く。

 小さな穴から覗く部屋。

 そこには誰もいないけれど、机に開かれたままの本や傍らの眼鏡に、貴方の体温が残っている。

 奥ゆかしい佇まいの貴方の家を、縦横無尽に飛び回る四つ足のくりゃりとした生き物のように、バリバリと障子を破って部屋に飛び込む性分ではないから。


 いやらしく部屋を覗き込む。

 そんなふうに飛び込んでいける生き物になれそうもないから。

 すり寄って来た柔らかい生き物を撫でまわす。

 貴方の手つきを真似して撫でまわす。

 喉を鳴らしているのは、きっと自分に違いない。



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