Chibi 1


 ひとりで眠るには広すぎるベッドの隅っこがこんもりと盛り上がっている。


 真っ白な羽根布団の中からチラリと茶色い髪が覗いていて、一日中チビがそこで眠りっぱなしだったことがわかった。
 川上はダウンライトをひとつ点けるとネクタイを緩めながら部屋に入り、今日の疲れを脱ぎ捨てるかのようにジャケットを肩から落とすと近くのソファーの背もたれに投げた。
 ドカリと音をたててソファーに座る。ため息をひとつ付くと、川上はガラステーブルにある灰皿を手前に引き寄せ手慣れた風にタバコに火をつけ煙を胸いっぱいに吸い込んだ。


「…ケイ?」


 起きぬけの掠れた声でチビがもそもそとベッドに体を起こした。


「ん、起きたか。どうした? 具合でも悪いのか?」

 チビはまだはっきりと目覚めていないのか、ベッドの上でぼんやりと膝を抱えて座っている。白く細い腕が薄暗い部屋に浮かび上がって見える。
 川上は吸い始めたばかりのタバコを灰皿に押し付けて火を消すと、ベッドに乗り上がりチビの体を優しく抱きしめるように寄り添った。
 チビはおとなしくされるがままに、小さな頭を川上の胸元にすり付けた。


「……なんかさ、」
「…ん」


 川上は大きな手のひらでチビの柔らかな髪を撫でながら次の言葉を待った。


「体がだるいんだ。風邪っぽくないんだけど力が入らないみたいな感じ」
「疲れてるんじゃないのか? バイト、ツライか?」


 チビは首を横に振ると、バイト先は楽しいし皆優しいよと答えた。
 それじゃあ、仕事に慣れてきて疲れが出始めているのかもしれないな、無理するなよと川上は言葉を返すと、着替えるために立ち上がりジャケットを片手に隣の部屋へ向かった。
 肩幅が広く、すらりとした体型にワイシャツが良く似合っている。その広い背中をチビが何か言いたげにじっと見つめていたことに川上は気づいていなかった。


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