キラキラ光るもの
自分よりも数歩先で、楽しげに歩く良紀の後ろ姿を見るのが好きだ。
素足に履いたローファーも、ポケットに突っ込んだ両手から後ろに伸びる肘の曲がった感じも、肩先で揺れる髪も、嬉しくて楽しくて仕方がないと言いたげに跳ねて動いているのがわかる。
昨夜の雨で街はどことなくしっとりと濡れているけれど、晴れ上がった青空から射し込む光は辺りに乱反射して、色素の薄い良紀の髪をキラキラと輝かせて眩しいくらいだ。
ふと、良紀が足を止めて振り返る。
何やってるんだよ、早く来いよとでも言いたげな顔して、こちらをじっと見つめている。
そんな瞬間。
良紀が何気なく振り返るその視線の先に、自分がいることが嬉しくてたまらない。
キラキラ光るその髪は、決して見失うことのない目印だから、わざとゆっくり歩く。
ほんの少しだけ遅れたふりをして、良紀が振り返るのを待っている。
ほら、また…。
立ち止まって、こちらをチラリと見て、また歩き始める。
この距離感がたまらなく好きだ。
あの目印を見ながら歩くのが好きだ。
そして、必ず振り返る良紀が好きだ。
(main小説「恋するふたり」より)
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