ボクはキミのためなら雨になり星になり風になり花になろう


 キミが細い肩を震わせて独り泣く夜。
 泣き声が外に漏れてしまわないようにボクは雨になろう。

 キミが夜道を恐々と歩く時。
 恐さが吹き飛ぶくらいたくさんの星を頭上に降らせよう。

 キミが悲しみに髪を切り落とす夕暮れ。
 心許ない首筋に柔らかな風を吹かせよう。

 キミが道に迷う夜明け。
 怯える足元を照らす色鮮やかな花になろう。

 けれど実際のボクは、雨にも星にも風にも花にもなれはしないことを知っているから。
 キミのために何ができるのか、じっと手を見つめてじっと鏡を見つめて考えていたんだ。

 そうして見つけた答えはボクの中にあったよ。

 キミが独り泣く夜にはこの両腕で抱き締めよう。
 キミが怖がる夜道は手を繋ごうね。
 キミが悲しみに暮れるなら肩くらい貸すよ。
 キミが道に迷ったら一緒に歩く両足があるさ。

 ボクがボクのままでキミを守ろうとするなら、結局ありのままの自分でいるしかないんだね。

 キミと同じ時代に生まれて良かった。
 腕と手と肩と足を持って生まれてきて良かった。

 キミがいてくれて本当に嬉しいよ。
 これからもどうぞよろしくね。


(愛すべきキミへ)
(唯一のボクより)


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