恋する月曜日 1


 通常、接客業やサービス業に土日休みなどない。

 けれど、その代わりに平日に堂々と休める利点があったりする。
 土日の賑やかな街角も好きだけれど、他人が仕事をしている平日に二度寝ができたり、空いている映画館へ行ったり、公園のベンチでボンヤリするのも悪くない。

 良紀は忙しい時間を過ごしているにもかかわらず、頭の中で裕一郎との休日をシミュレーションしていた。


 だめ押しのように、在庫一掃セールを開催した土日。
 良紀の勤めるセレクトショップは、多分、今期最大の売上げを計上したに違いなかった。開店前には既に行列が出来ていて、30分ほど開店時間を早めたほどだ。

 朝イチからラストまで立ちっぱなしで休憩もままならぬ状態。
 いつもよりバイトを増やしていたにもかかわらず、棚の補充が間に合わないなんて久々のことだった。

 そして怒涛のように時間が過ぎて。
 お客様が退けた後でも、在庫チェックと補充、新たに入荷した商品の検品が良紀に襲いかかる。
 今日一日頑張ってくれたバイト達を先に上がらせて、売上金と伝票の最終チェックを済まし、近くの夜間金庫へ売上金の入ったバッグを預けに行けば任務完了。
 良紀は肩まで掛かる茶色の髪を揺らし、その小さな顔を笑顔でいっぱいにしながら店に戻った。

 明日の月曜日は、美容師である裕一郎も休みなのだ。
 年中無休のヘアサロンでの勤務は、余程のことがない限り変更のない固定勤務シフトになっている。
 土日のないふたりにとっては月曜日が週末というわけだ。 


 店内にかけられた時計の針は閉店時間の午後8時を過ぎ、もうすぐ9時に届きそうだった。
 奥の事務所で大きな身体を屈めて、難しい顔をしながらパソコンに向かう店長にひと声かけて、良紀は週末の喧騒が残る街角を通り抜けて家路を急いだ。

 さっきまであんなに痛かった足の裏は、もうそんなことを忘れたかのように軽やかで。
 時折、楽しそうに歩いて行く良紀を振り返る人がいたが、良紀の目にはそんなものが入り込む隙間などなかった。



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