甘やかし強化月間





「音彩、これどういうことや」

学校に来て早々屋上に連行され、訳も分からず慌てる。
壁際に追い込まれてグイッと顔に近づけられたスマホの画面には、グリンさんから頼まれていたPVのサムネが映っている。

「なんで俺以外のやつに勝手に協力してんねん」
「ええとね、それには訳があって」
「ちゃんと俺が納得できる理由何やろうな?」

怒る、というよりは拗ねた表情をする光は
私が勝手に別の人と連絡を取っていたことに納得が出来なかったらしい。
申し訳ないと思う反面妬いてくれてるのかな?なんて思うと少し嬉しくなってしまう。

「…ごめんなさいドッキリと声真似につられました」
「アホ」
「いっ」

でこピンをかまされてオデコがジンジンする

「…俺は笑えんドッキリは嫌いやねん」
「…うん」
「お前がペア組んでるんは俺やろ」
「うん」
「お前が好きなんは誰や?」
「ひ、光です」
「じゃあもう二度とすんなや」

やっぱり拗ねた様子がなんともかわいく見えて笑ってしまった。

「何笑っとんねん」
「だって…」

光は笑いが収まらない私の両頬を挟んで唇を啄んできた。

「ひ、ひか…」
「笑っとるかかわええけどそうやって照れとる表情の方が好き」
「な、何言ってんのバカ!」
「バカは禁句やで、ペナルティな」
「な、ちょ…」

結局一日いつも以上に甘えられた。
グリンさんと出会った時には後ろから抱きしめられて威嚇するかのように光が睨みを利かせていた。
まるで猫の縄張り争いのようで可愛かったのだが、
表情に出すと光がいきなり始めた甘やかし強化月間が伸びるので何とか押し殺してその場を落ち着かせようと頑張ったのだった。

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