体温上昇中にて



「失礼しまーす」


保健室にいつもの調子で入ると見知った人物が椅子ごとくるりと振り返る


「お、音彩ちゃん」

「…白石先輩何やってるんですか」

「ん?何って保険医代理?」

「……」

「冗談やって、用事あるらしいからしばらく任されただけや」


まぁ白石先輩になら任せてもいいのだろう 
生徒からも先生からも信用が高い先輩だからこそだ、今授業中だし


でも何かとよくしてくれる先輩だが、中身を知ってしまっているのでキャーキャー言えない 
だってこの人残念なイケメンだもん


「で音彩ちゃんはどないしたんや」

「頭痛い」

「あー…とりあえず熱測ろ」

「はーい」


大人しく渡された体温計をわきに挟みつつベッドに腰掛ける 

――ピピッ 


「うーん…?」


表示された数字を見てもなんだかしっくりこない…これ、微熱?
私の表情を見て察したのか白石先輩が口を開いた


「音彩ちゃんみしてみ」

「はい」

「…7度8分て熱あるやん!」

「え、嘘、微熱じゃないんですか」

「微熱は7度5分までやからギリギリ熱あんねん」

「細かいよ先輩」

「ええから横になり」


白石先輩はそう言って布団に入るように急かすので仕方なく布団にくるまる

(…あ、光にメールしないと)

そう思って先輩が冷えピタを探してくれてる間に熱があるので次休むとメールを入れて枕元に置いた


「ほら、デコ出してみ」

「え、自分で張れますよ」

「ええから」

「なんかお母さんみたい…」

「誰がオカンや」


大人しく前髪を上げるとピタリつけらた冷たさに思わず身が竦む、この瞬間だけは何回付けても慣れない


「とりあえず次の時間は寝るんやで、損でも熱下がらんかったり怠かったら早退した方がええで」

「了解でーす…」


それにしてもいきなり熱とかどうしたんだろう私、風邪ひいていきなり熱とか珍しすぎるな
そう思っていると何の前触れもなく保健室のドアが開いたかと思うと足音がこちらに向かってきてカーテンを開けた


.


- 9 -