「ね、謙也くん…皆には内緒ね?」


聞かれたくないのか声のトーンが下がった彼女は先程から顔色が悪い
大丈夫といって笑っとったけど、その笑顔は痛々しい…俺じゃ役に立てん?そう思った矢先の言葉やった


「なんか、宮野さん…雰囲気が皆と違うっていうか…怖い」


そう言った彼女の言葉は本当に恐怖しているかのようにで、終いには声が震えていた 彼女は誰よりもそう言ったものに敏感なんやろうと思う
得体のしれない何かに怯える緋蝶、その不安を俺だけに訴えてきた彼女に不謹慎だが嬉しくなった


「大丈夫やって!まだ来たばっかやし、何かあったら俺らが…俺が守る」


皆やってこんな緋蝶みたら守りたくなるやろうけど…今は、今だけは彼女を守る役を独占していたい
あの転校生が緋蝶に危害を加えるかは解らんけど…もしそうなら俺は容赦せん


「…ありがと、謙也くん」

さっきよりは柔らかい、少し照れたようにはにかんだ彼女は文句なしにかわええ
でも何時もの様な愛らしい元気な笑顔は見れんかった…それもこれも時期外れなあの転校生のせいや

てか白石声には出しとらんけど嫌そうやん、何無理に話しかけとんねん
白石も白石で嫌ならハッキリ言えばええのに…そないな状況でも緋蝶の表情の変化に気づいたんは流石やと思うけど
あ、白石と目合った…自分そいつ見張っとけや なんて視線で気付く筈ないけどな
でもそんな表情して隣チラ見したって事は、俺の視線でそいつが原因なのは気付いたんやろ?


さて…どうなるんかな、明らかに楽しみじゃないっちゅー話しやけどな


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