反対方向


「ほら、後ろのり」


連れられてきたそのには彼の自転車


「…私重いよ」

「この前持ち上げた時重さ確認済みやっちゅーねん」

「…」

「ええからはよ乗り」

「し、失礼します…」


荷台に横座りして(普通に座ると凄い痛い)財前くんの服をちょこっと掴む


「…それじゃ落ちるやろ、手まわし」

「あ…」


そう言って私の手を掴んで腰に回した


「わっ」


彼が自転車をこぎ始めた時に揺れる感じが怖くて思い切りしがみ付いてしまう

その後は特に会話は無かったけど気まずいって事は無かった 

ただ抱きついてるんだって事を考えると少し恥ずかしかったけど
彼から伝わってくる平均より少し低温な彼の体温が凄い心地よくて、このまま抱きついていたいなんて思ったりしてしまったり


「…そっちの方が大会早いんやっけ?」

「うん」

「見に行けへんけど、頑張れや」

「ありがと、私は見に行くから頑張ってね」

「…来るん?」

「何その嫌そうな声」

「別にー」


何時も通りの、何も変わらないやり取りが凄い愛おしい
来年も…同じクラスになれば毎日続けられるんだよね 

そう思って回した腕の力を少し強めた


「…どうしたん?」

「別にー」

「真似すんなや」

「ごめんごめん…でも、ホント何でもないから」

「ふーん?」


そこでまた話題は途切れてしまったが、それは私の家についてしまったからだ


「よっと…ごめんね送らせちゃって」

「ええよ、それよりこれからは暗くなる前に帰るようにしいや」

「ん、わかった」

「ほな後でメールするわ」


そう言って彼は今来た道を引き返していった…え、嘘


「財前くん、反対方向だったんだ…」


この前は風邪引いてたから玄関までしか見送れなかったし、というか誰から家の場所聞いたんだろう


わざわざ送ってもらって申し訳ないという気持ちと、何故か嬉しいと思う気持ちがぶつかっていた



.
<<>>
TOP