引っ越し




「いや!私ここに残りたい!!」

「緋蝶…俺かてこのまま引き止めたいわ」

駅のホームでテニス部のレギュラーに見守られる中緋蝶は白石に思い切り抱きつく

「うぅ…毎日メールするから、電話は最低でも週2か3」

「おん・・・って俺が引っ越すみたいないい方やめ!」

「どっちにしろヤダ・・・」

「緋蝶、長期の休みは絶対こっち戻ってき?」

「うん・・・うん」


泣きながらもちゃんと返事をする緋蝶の背を優しくさすりながら白石はそっと身を放した


「…私、皆の居るテニス部のマネージャーやってたかった」

「俺らやって!緋蝶がマネージャーじゃなきゃつまらん!楽しみなくのうしまう!」

「俺もやぁああ!」

「金ちゃんはともかく謙也まで泣くんやないわ」

「そうっすよ、だからヘタレ言われるんですよ…ヘタレ」

「財前…後で、覚えとき…ズズッ」


涙目で恨みがましく睨むが彼は涼しい顔で受け流す


「緋蝶、俺らにも偶には連絡よこし?」

「もちろん!試合も絶対見に行く!学校休んででも行く!」

「緋蝶ちゃんったら可愛い事言って…ぐすっ」

「小春…泣くな、俺かて…グスッ」

「ってお前らも泣くんかい!!」


涙目のままの謙也のツッコミに思わず苦笑してしまった


「皆・・・今までありがと、また長期休暇の時絶対帰って来るから!!」


そして駅のホームの音が無情にも別れを告げる


「皆…またね」

「緋蝶・・・!」

「ぅ、蔵ぁ」


扉が閉まった瞬間に緋蝶はまた泣き出した


「緋蝶…!」

白石は追いつけなくなるまでその電車について走った


「…白石」

そんな彼を追ってきたテニス部のレギュラー達は心配そうに白石を見つめた


「反則や…閉まってしもうたら涙拭うてやれん…」


そう言って俯いた彼の声は震えていて、
何時もの頼りになる部長の後ろ姿は何処か弱々しく見えたーーー




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