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「キャー! 跡部くーん!」
「忍足くんかっこいいわ!」
こんな黄色い声が飛び交うのはいつもの事だ。
今日は練習試合……と言ってもレギュラー内でだけど。
休みにもかかわらず、この人数が集まるということはよっぽど人気で皆暇なんだろう。
私はマネージャーだから暇だったわけじゃないんだけど……彼女達を意識すると自然とマネージャーと言う立ち位置に居ることが誇らしくなる。
だって私も皆と同じでレギュラーに本命の殿方がいるのだから。
頑張る姿を一番近くで見れるからこそ、惹かれてしまった。
跡部くんと忍足くんが試合する、隣のコートで力強いプレイを見せる……そう!
「きゃあああ樺地くぅううん!! 今日もカッコいいいいい!!」
大歓喜する私に周りが驚くここまでテンプレ、いつも通りだ。
「お前……ホント樺地大好きだな」
「うん!」
向日くんに苦笑されたが私は構わず笑みを崩さない。
だって目の前で樺地くんがテニスしてるんだもん、これ以上の目と心の保養はないだろうに!
何故か樺地くんの女性ファンは驚くほど少ないけど、逆に競争率が低いから助かる。居ても負ける気ないけどね!
それに加えて私はマネージャー!
精一杯アピール頑張ってます、ああ勿論迷惑にならない程度にね。
「お前樺地のどこが好きなわけ?」
「全部」
「全部って」
「外見も内面もパーフェクトでしょ」
むしろ、樺地くんの良さに気付けない周りがおかしいと思うんだと私は思う。
外見だって身長は凄く高いし、体格はがっしりしていて無駄な肉がないし無表情なポーカーフェイスも素敵。
口数は少ないけど仲間思いで何より跡部くんを慕っている。跡部くんもそれをわかっているからこそ彼に絶対の信頼を寄せてくれている。
やっぱりわかる人にはわかるのよ樺地くんの良さが!!
最初はなんか俺様なやつだと思ってたけど、彼のインサイトは本物だと断言できるわ!!
「ああ樺地くん……!」
「お前ほど盲目一途なやつもなかなか珍しいよな」
「え、そう? 周りに結構いるけど」
「あれはミーハーだろ、そうじゃなくてさ」
よく考えてください向日くん、一括りにミーハーと言ってはいけないよ。
この中には本気で恋してる人も結構いると思うんだ私は。
面と向かっていえないからこそ黄色いけど声援を送っているんだよきっと。
それと同じ、だから私もこうして声援を送っているんだよ。
そう言うと向日くんはポカンとしてからくはっと笑った。
「でもお前の声いつもすっごい響いてるから本人にもバレバレだろ」
「今更でしょ、私は面と向かっていえるからいいもん」
「お前ある意味最強だな」
「そう?」
何を基準にしてどのジャンルで最強なのかは、向日くんのみぞ知るところ。
だが今は樺地くんの試合、というか彼の動きを目に焼き付けておきたいのでそれは後で聞くことにする。
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