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「ありがとうございます。けど、どうして図書室だとわかったんですか?」

「君は図書委員だろ?」

「そうですけど、知ってるんですか?」


彼の返答に驚くと彼は当たり前の様に頷いた。


「君はどの図書委員よりよく動いているから、印象に強かったんだ」

「そ、そうですか」


彼を見ていたいけれど、視線が交わってしまったらどうしよう。
なんて考えては照れたりして、なにしてるんだろうと我に返る。
カウンターにいればいいのだが、本を読むの性に合わないから、動くしかない。

その結果結構忙しない人、そんな印象がついてしまったらしい。
しかも今ので鈍さも追加された気がして、この前とは別の重い溜息をつきたくなった。


「君は自分の容量に収まりきらない仕事も引き受けてしまうらしいな」


図書室に向かいながらそんな一言がグサリと心に刺さりながらも、言い訳できずに半ばやけくそに言い返す。


「確かに頼まれたると断れないですね」

「頑張りすぎるのも考え物だ、だがそれが君のいいところでもあるのだろう」

「え?」


急に褒められたので驚いて隣を歩く憧れの彼を見上げる。
すると、彼と視線が合った時やはり心臓が跳ねた。


「君の頑張る姿を見るとついつい世話を焼きたくなる」

「っへ!?」

「過保護欲を掻き立てられるというのか」

「な、なに」


彼の口から発せられる言葉に逆上せそうになりなる。
恥ずかしさのあまり足元へと視線を彷徨わせる。
心臓がバクバクしてる、絶対顔は真っ赤だろうからこちらを見ないでほしい。


「取あえず、お互いを知るところから始めたいと思っているのだが」

「え」

「いつも熱烈な視線を受けているのは、そういう意味だと思ったが、違うか?」


ああ、勝てる気がしない。
そう思った私は小さく違わないですと呟いた。

予期せぬ展開で叶わないと思っていた願い以上の結果を得たのだった。


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