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「どうしてこんな可愛い幼馴染を紹介してくれなかったのさ!」

「なんでてめぇに教える必要があるんだよ」

「そりゃもちろんお近づきになりたいからさ!」


そう叫ぶと千石くんは、私の手を両手で掴んで目を輝かせた。


「ひなちゃん今フリー? もしよかったらメアドとか交k……いっ!」


彼の言葉を遮るかのように、すごくいい音を立てて彼の背中をぶっ叩いた仁くん。
拳が出なかっただけましな方だと私は認識している。


「ひ、酷いよ亜久津」

「お前が面倒な事言い始めるからだろ」

「面倒じゃないよ、大事な事さ! 俺とひなちゃんの第一歩はここから始まるんだよ!」

「始まらねぇから早く帰らせろ」


あ、イライラしてきてる。彼が本気で起こると機嫌なおすのが面倒なのだ。
この状況よりはるかに面倒だ。


「亜久津先輩はひなさんとお付き合いとかはしないんですか?」

「「は?」」

「だ、だって2人とも凄く仲がよさそうでしたし!」


その言葉に私はちらりと隣を見ると、彼も私を見てきたのでばっちり目が合った。
暫くその状態を保ちながら、明確な答えが私の中で生まれる。
彼も同じ考えだったのか、普段通りの声音で言葉を投げかけられる。

「ないな」

「そうだね」

「ないんですか!?」

「こいつは幼馴染だ」

「そういうこと」

「じゃあ俺と!」

「それもねぇから、お前も安心して帰れ」


なんだかコントをしているような光景を見ながら、いつの間にか仁くんのイライラが解消されてることに気付いた。
この恐らく後輩の子は、本人が予期しないほどマイナスイオンを発しているらしい。


「仁くん」

「なんだよ」

「いい友達を持ったね」

「はぁ?」


私がニコニコと笑うと仁くんが「俺の周りには変なやつしかいねぇ」と疲れた様に再び溜息をついたのだった。


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