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嫌なことは忘れるに限る。
朝食を食べるペースを少し早くしていると、ふと蓮二がまだいることが気になった。


「そう言えば蓮二、朝練は?」


普段私を起こした後朝食を食べ始めるのを確認してから朝練に出かける彼が、今日に限って一緒に朝食を食べている。


「今日は無しになったんですよ」

「そうなの? じゃあ一緒に登校できる?」

「ええ、もちろん」

「やったぁ!」


嬉しさのあまりついはしゃいでしまったが、そんな私の様子を蓮二は静かに微笑んでみてくる。
……うん、やっぱり立場逆だよねこれ。


「あ、お父さんもう行かないと」

「本当だ、お前たちも行くぞ」

「うん」


父と一緒に私達も席を立つと、玄関までお母さんが見送りに来てくれる。



「今日は早めに帰ってこれると思う」

「無理はしないでね」

「わかってるさ」


そんな見慣れたやり取りを交わす二人。
何度見ても、心がぽわっと温かくなる。


「俺達はいつも通りに帰ってきます」

「寄り道しないからね!」


そう付け足すと、お母さんは笑いながら私の頭をポンポンと撫でた。
あら珍しい。



「じゃあ行ってくる」

「母さん、行ってきます」

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい、気負つけてね」


これが、毎朝見られる柳家の光景である。



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