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最近、自分に父子本能に目覚めた気がするのは気のせいではないと思う。
子を持たぬ、ましては学生の自分が何故そんなことを思うのかというと、その理由はただ一つ。
「あー比呂士ー!」
その声に振り返ると無邪気に笑いながら手を振る女子の姿。
そのままこちらに走ってくるのが、彼女が理由の子であるひなだ。
なぜか中学生の時から同じクラスになり続けている、腐れ縁と言うやつなのだろう彼女は何処か抜けている。
放っておいたらこの年齢でもお菓子に釣られて誘拐されてしまいそうな程、ふわふわしてるのだ。
そう思ってから気にかけてもう数年、この立ち位置に随分慣れた。
「ひな。女子が廊下で大声を上げるな、それと廊下は走るなとは何度も言っているでしょう」
「ごめんごめん」
「ごめんなさいは一回で十分です」
「……ごめんなさい」
シュンとする姿に少し心を痛めながらも、叱るのも愛情故だと自分に言い聞かせる。
「よくできました」
その証拠に、ちゃんといいことをしたり本気で悪いと思っていればこうやって褒める。
飴と鞭の使い分けと言うものでしょうか。
褒めながら頭を撫でてあげるとパッと花が咲いたかのように笑うひな、全く表情豊かで見てるこちらの心が洗われるようです。
「あ、そうだ! あのねあのね!」
「なんですか?」
「んとね、えっと!」
早く聞いてほしいのか目を輝かせながらその場で身を震わすひな。
早く話したい気持ちが伝わっては来るのだが、その前置きが余計話しを遠まわしにしていることに気づいていないところがまた可愛い。
「さっき先生が比呂士のこと呼んでたの!」
「そうなんですか?」
「うんうん! だから職員室いこう!」
ちゃかり、と言うよりもついていくのが当たり前というように元気よく言う彼女についてくるなとは言えない。
そもそも断る理由もないので、小さい子どものように手を引っ張って笑うひなに思わず頬を緩ませつつも大人しく引っ張られることにした。
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