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「ひなさん少し大人しくしててください!」
「長太郎こそ! ちょっとは自重して!」
「ひなさんはいつでも一緒に居られるじゃないですか!」
「居られるはずなのに、長太郎が異常な位ついてくるんじゃない!」
「おい、お前ら喧嘩すんなよ」
「「亮(宍戸さん)は黙ってて!(ください!)」」
「お、おう!」
言い争っている癖に本人も気圧される程の迫力で息を合わせる二人。
仲がいいのか悪いのか、多分いいのだろうなと宍戸は溜息をついた。
「大体ね、いくらダブルス組んでるからって一緒に居る回数が他より多いのよ!」
「向日さんだって忍足さんとかと一緒に居たりしますよ!」
「いや、その二人より長太郎が亮といる時間の方が絶対多い!」
「ダブルスはプレイスタイルだけでなくお互いを信頼しきってるからこそ出来るものです、一緒に居ても違和感なんてないでしょ!」
「そりゃそうかもしれないけど、彼女が居たら気を使うでしょう!?」
「ひなさんのは行き過ぎてこちらの会話にまで口出しするじゃないですか!」
「そっちだってこっちの会話に口出しするじゃない!」
お互い似た者同士というか……発言もどっこいどっこいな二人に再び溜息をつく宍戸。
(っつーかこいつらの方が俺よりあってるんじゃねぇの?)
彼女のひなも、ダブルスコンビの長太郎も、どちらも大切だからこそじれったい。
彼氏としては名前呼びしてたりするところには嫉妬するしダブルスコンビとしては息がピッタリなことに嫉妬する。
(どっちも大事って、ある意味大変だな)
目の前で喧嘩する二人には呆れつつ嫉妬しつつ、けど結局はこんな毎日も悪くはないと思っている。
(二人の会話の内容も俺中心で結局皆嫉妬してるだけだしな)
ガキだなと思いつつ一番得する立ち位置に居るのは自分なのかと、しみじみ考えて居る自分がまた可笑しかった。
「お前らどうでもいいけど昼飯くわねぇと昼休み終わっちまうぞ」
「あ、そうだった!」
「すみません宍戸さん!」
「直ぐ用意するから!」
そう言って二人は喧嘩の途中だという事も忘れて慌てていた。
ひなは自分のかばんを漁り小さ目の重箱を取り出す。
「今日も頑張ったから残さないでね」
「誰が残すかよ」
「ひなさん料理上手ですもんね」
「二人が美味しそうに食べるからつい力が入っちゃうの!」
あんなに口論していたのに、打って変わって笑顔の二人は飯の時には喧嘩はしない。
それどころかあの光景が嘘だったかのように仲良く話す。
(これが不思議なんだよなぁ)
美味しそうに食べる二人を見比べ、宍戸はつい笑ってしまったのだった。
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