2



お弁当の魚を少しほぐして、私が手を出すとその上に少しだけほぐした魚を置いてくれた。


「にゃんにゃん、食べる?」

「に……」


にゃんこは品定めするように魚を見たり匂いを嗅いだりして、すぐにはっくはっくと食べてくれた。なんて可愛い光景。


「可愛すぎてどうにかなりそう」

「その前に弁当を食え、その間俺が相手しててやるから」

「うん!」


いつの間にか食べ終わっていた彼がそう言ってにゃんこを引き取ってくれた。
……本当はもっと可愛がっていたかったのだが。
若が率先してにゃんこの相手をしてくれると言うのでぜひその光景は見たい。
私は頬の緩みを誤魔化すように、卵焼きを頬張った。



――そして、冒頭に戻るわけだが




お互い真剣な表情でじゃらしじゃれる……なんてシュールな光景なのだろうか。
若はどこから取り出したのか、小さいポンポンのついたストラップを片手ににゃんこを釣っている。
好奇心旺盛なのかにゃんこは凄い勢いでじゃれる。
そしてそれに対抗心が湧いてしまったのか若も真剣な表情になっている、と思われる。

その光景があまりにも凄かったので、途中から膝の上にお弁当を乗せて片手で携帯を持ってムービーを撮る。
行儀が悪いとか、そんなの元からだよ!
今は目の前の光景を映像として残したい一心で、必死に綺麗に映るポイントを探しつつご飯を食べる。


「ひな、そんなことをしてる暇があるなら早く食べろ」

「えー無理、撮るので忙しい」

「お前なぁ」

「にゃーぅ」

「ほらお呼びだよ」

「はぁ」


仕方ないと言った様子だが、少し嬉しそう。
なんだよ満更でもないんじゃないかにゃんこの相手。

結局私がご飯を食べ終わったのは昼休みギリギリで、次の授業に遅れそうになって慌てる羽目になるのだが。

携帯の待ち受けをどさくさに紛れて撮った猫と戯れる若にできたので、後悔はしていない。


.

[ 13/80 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]