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「……」


今日の私は、運が良かったとしか思えない。
現在進行形で隣に広がる光景を見ながら、しみじみそう思った。



――数分前


「今日はあったかいねー」

「そうだな」

「最近寒い日続いてたから、こういう日は嬉しい限りだよ」


私はお付き合いさせてもらってる若と中庭で昼休み昼食をとっていたのだけれど、その途中のことだ。


「みゃぁ」

「え?」


学校には不釣り合いなくらい、可愛らしい声に驚いてそちらを見る。
すると、物陰から少し小さめのにゃんこがこちらを見ているではないか。


「にゃんこ?」

「何故学校に……迷い込んできたのか?」


冷静に言っているように見えるが若は結構驚いていた。
本人には悪いが少し可愛いと思ってしまった


「おいでーにゃんここっちおいでー」

「そんなんで来るのか?」

「くる! ちっちっち、こっちおいでー」

「……」


純粋ににゃんこと戯れたかった私は、箸入れを振ってじゃらそうとする。 
すると意外にも、こちらにちょこちょこときてくれた。
本当に来てくれるとは思っていなかったので、ちょっとした感動を覚える。
近寄ってきたところで少し迷った様子だったが、また小刻みに振ってあげるとぽふっと前足で箸入れを叩く。


「みゃー」

「可愛いっ!」

「お、おい」

「ふふ、人に馴れてるのかなぁ?」

「にゃ」


箸とお弁当を横に置いてにゃんこを抱き上げると、これまた意外にも逃げる素振りも見せない。
それどころか、大人しくじっとこちらを見つめてくる。
膝の上に乗せて喉を撫でてあげると、ゴロゴロと安心しきった様子で喉を鳴らす。


「どうしよう凄く可愛い」

「お前な……」

「ん?」

「いや、なんでもない」

「?」


良くわからないが彼のお許し(?)が出たのでにゃんこと戯れることにした。


「あ、お魚食べるかな」

「その魚なら食べるだろ」

「若、ちょっとほぐして」


自分でやれと言わんばかりの視線を向けた癖に、やってくれる若の優しさ。
私はちゃんとわかってるし、ありがとうって思ってるからね。




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