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「卯月、ちょっと来い」

「へ? ぇえ!?」


突然腕を引かれて連行される。
驚いているうちに彼は電話で誰かに電話していた、どういうこと?
つれられるまま彼の迎えであろう目を背けたいほどの豪華な車に押し込まれる。


「あの、跡部くん?」

「家に連絡は入れておいた、遅くなっても心配はいらねえ」

「ありがとうございます……じゃなくて」

「あーん?」

「どこ、連れてくきですか?」


私にだって聞く権利はあるはず、そう思ったら彼はにやりと笑って「気にするな」と言った。
いや気になりますって。
そうして連れてこられたのは何故か大きい病院の眼科。
え、どういうこと?


「準備はできてる、行くぞ」

「は?え?」


それからは凄かった。
凄い手際の良さでコンタクトレンズを作ったかと思えば、早速つけることになって。
眼鏡より全然見える事に感動しつつ、今度は別の場所へつれていかれる。
お洒落な洋服を手渡されつつ、今度は美容室に連れて行かれる。
髪をカットしてセット……あれ、どうしてこうなってるんだろう?

そんな疑問が本格的に浮かんできたのは彼の家。
というかお屋敷とか豪邸とか言う名前の方がしっくりくる、跡部家に連れてこられてからだった。
大広間のようなところに連れてこられ、いい加減聞いてもいいだろうと口を開こうとした時、入り口のドアがノックされた。


「跡部、急に呼び出して何の用なん?」

「!」


入ってきたのは何故か氷帝のテニス部レギュラーの皆様……状況が理解できない。


「で、この子は誰なんだ?」

「随分可愛い子やんなぁ」

「ぇ、えと」


完全に聞くタイミングを失ったと同時に囲まれて困惑するしかない私。
どうしようかとおろおろしていると二年生の時同じクラスだった彼が「あー!」と声を上げて私に近づいてきた。


「ひなちゃんじゃん!」

「芥川くん!」

「ひなって、卯月ひな!?」

「そうだ」


ここでようやく跡部くんが、自分のことのようにドヤ顔で口を開いてくれました。


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