1
「リズムに乗るぜ!」
元気に朝から走り回る彼氏が、丁度家から出てきた私に気づいて走って来た。
「アキラ今日も元気だね」
「ひながマイペースすぎるんだろ?」
「そうかなぁ、私いつも通りだよ?」
溢れてた欠伸を噛み殺してゆったり歩いていると、アキラはじれったそうに地団駄踏み始めた。
「ぁあ゛ーもう!ひなはどうしてそう恐ろしい位のんびりしていられるんだ!」
「ふぇ、何が?」
「スローすぎるぜひな! もっとリズムに乗ろう!」
「リズム?」
リズムに乗ろうと言われても何をどうすればいいのかわからず、コテンと首をかしげるとアキラは今度頭を抱え始めた。
「なんで俺の彼女なのにひなはこんなにゆったりしてるんだ」
「そんなの私に言われても……ふぁ」
今日は目覚ましをかけたのだがタイミングが悪かったのか、眠りの波が深くなろうとしているときに起きたらしい。
とりあえず寝起き最悪だったので欠伸が止まらない。
「ひな、ちゃんと早く寝たのか?」
「うん、寝起き最悪なだけ」
「そのせいか、いつもよりスローテンションなのは!」
「アキラは、私の事嫌い?」
確かによくわからないけど、リズムに乗たがる彼からしたら私はのんびりしすぎてるだろうということは分かっている。
嫌われてたら嫌だなと思ったら自然と涙がじわじわ滲んできた。
「うぐ……す、好きに決まってるだろ! 泣くなよ!」
「! よかった…!」
ああやっぱり私は彼が好きだとしみじみ感じた。
彼の一言で私の感情はこんなにも左右されるのだから。
「ほ、ほら、早く学校行こうぜ!」
「うん」
手を引かれて走る。
私に合わせて遅めに走ってくれる彼を見て、たまにはこういうのもいいかなと思った。
「ひな走り方ゆるっ!」
「へ?」
「もっとこうシャキッと走れよ!」
「むぅ」
多分、この争いは絶対繰り広げられるだろうけど。
.
[ 54/80 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]