財前くんに壁ドンされる
「俺、十万打さんの事、ずっと好きでした!」
その言葉が信じられなくて私は目を見開いた
なんというか、私の場合光と付き合ってるわけだから
こんな王道に屋上に呼び出されて告白されるなんてマンガみたいな展開は初めてだった
「ごめんなさい、気持ちは凄く嬉しいんだけど付き合ってる人がいるから」
「財前と付きおうてることは知っとります」
「え、じゃあどうして…」
「俺、このままやと未練タラタラになりそうやったから…」
そう言って頬を掻く彼はなんというか青春してる少年の鏡だったよ
その後彼は振ったにもかかわらずいい笑顔でお礼を言って去って行った
…ホントできた人だ、私なら一人でうじうじして終わると思う
「…何ニヤけてるん?」
「っひゃ!?」
私以外誰もいないはずの屋上で光の声が聞こえてきて思わず変な叫び声をあげてしまった
振り返ると不機嫌そうに壁に寄り掛かって腕を組んでいた…いや凄く様になってるけど明らかに怒ってるからそんなこと口には出せない
「ひ、光…いつからそこに?」
「あいつと入れ違い」
「そ、そう…」
「…」
無言の威圧と言わんばかりに空気の重い彼の近くに行くのは気が重い
しかしこのままでは余計に機嫌を損ねかねないので恐る恐る近寄る
「光、なんで怒ってるの…?」
「…それ本気でいっとるん?」
「っきゃ」
ありえないというように眉を潜めて言う光に少し身構えそうになったのだが、その前に腕を引かれて前のめりになりかけた
そのまま壁に投げられるように手を離されて背を軽く壁にぶつけてしまった
痛いと怒ろうとしたらドン!なんて音が大きく聞こえてきて、恐る恐る視線を移せば彼の手がそこにあった
光は手の位置を私の頭上に移動させグイッと顔を近づけてきた
「ありがとう」
「は、はいっ」
「自分、誰の彼女かわかっとるん?」
「光、の」
「わかっとるなら他の男に何ついていっとんねんこのドアホ」
「んぅっ」
捲し立てるようにそう言った光は噛みつくかのようにキスをしてきた
唐突なことで身が強直して、つい前に居た光の制服を緩く掴んだ
「っは…」
「…スマン八つ当たりや」
そう言った光は気まずそうに視線を逸らしたが少し申し訳なさそうな悲しげな表情に胸が締め付けられるような気がした
「私もごめん、ちょっと軽率だったよね」
「今回はあいつがええやつやったからええけど、気の荒い奴やったら何されとるかわからへん」
ありがとうになんかされたら俺抑えられる気がせぇへん
そう言った光は珍しく気弱に私の首元に顔を埋めた、まるで顔を見られたくないという様に
私は背に手をまわして片方の手で頭をそっと撫でた
光もそれにつられて私の背に手を回した
「俺ほんまアカンねん、ありがとう事となるといつもの自分でおらんなくなる」
「そうなの?」
「せやから俺の知らん間に他の男と二人きりにならんで」
頼むと回された腕に力を込められて大人しく頷いた
心配させてしまったのは申し訳ないから今度からそういう状況にならない様に善処しようと思う
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