幸村くんが眼鏡をかける話

「おはようありがとう」

「おはようせいいt…」

「どうしたの?」



いや、貴方がどうしたのかを私は聞きたい。
あのテニス界で神の子と呼ばれたあの精市が何故、何故…


「何故眼鏡を付けておいでにっ…!」

「言葉使いまでおかしくなるくらい驚いてるの?ありがとうは分かりやすいね」

「それほどでも…じゃ、なくて!」

「ん?」

「っ」


ん?だよ皆!(何)普段眼鏡かけてない人が眼鏡かけて首かしげで何、どうしたんだよの一言を込めてん?だよ!(意味不明)
しかも私の好きな黒縁眼鏡じゃないですか!これをお洒落につけこなせるなんて、流石神の子!

なんて内心教室の机を吹っ飛ばしてゴロゴロ転がっているけどそれを表情に出せるわけもなく、


「でさ、ありがとうに聞きたいんだけど」


追い打ちをかけるかのように笑顔でさり気なく顔を近づけてくる


「この眼鏡似合ってる?」

「に、似合ってますとも…」


寧ろもう後光が差して見えるくらい似合ってる、思わず見とれていると彼がニコリと笑った


「ありがとうは俺が眼鏡かけてるのどう思う?」

「ぇ、どう思うって…?」


よく意味が解らなくてオウム返しのように聞き返す、たじたじになる私に尚彼は笑みを保って再び口を開いた


「俺、ありがとうがかけてほしいならこれから眼鏡かけるけど」

「え!?」

「そんなに驚くこと?」

「ぇ、だってそれ…」
「伊達眼鏡だよ」

「…目いいのに、普段からかけるって邪魔じゃない?」

「大丈夫だよ、他校に似たような奴いるから」

「そ、それは関係ないんじゃないかな…」


というか目がいいのに普段伊達眼鏡かけてる知り合いがいるってところに驚きだよ…お洒落、なのかな?


「それにしても精市、なんで眼鏡なの?」


ふとした疑問を投げかける…うん、先ほどから質問ばかりしてるけどたじたじだけど急にこんな状況になったらみんなこうなる…と思いたい。
すると彼はピタッと動きを止め少し戸惑ってから拗ねたように言う


「ありがとうが、眼鏡かけてる人ってカッコいいよねとか言ってるの聞いたから…」

「だから眼鏡?」

「うん、かけてるだけでありがとうにそう思ってもらえるなら伊達でもかけていいかなって」


え、なにこの人可愛い。
あまりの不意打ちに胸がキューっと締め付けられた


「精市は、眼鏡かけなくても他の人よりカッコいいから大丈夫だよ」

「!」

「でも、折角似合ってるから…たまにはかけてほしいかなーとは思ったけど」


そう言って笑うと精市はキョトンとしてからふっといつもの柔らかい笑みを見せた


「ありがとうにはかなわないな」

「私は精市にかなわない気しかしないんだけど」

「そんなことないよ…とりあえずこれからは偶に眼鏡かけることにしてみるよ」


いつもは余裕そうな彼も妬いたりするのには驚いた…今度からは発言に気を付けよう

でも今回はカッコいい精市が見れて得しちゃったからプラマイゼロってことで


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