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「…ありがとう先輩」

「ん?」


穏やかな風が髪を撫でつけ眠りを運んでくるような陽気に誘われて顔を伏せていると
不意に昨日聞いたばかりの、気になって仕方のなかった人物の声がした


「雅治くん」


昨日思い切り逃げられたのに今日はそちらから会わられるとは何事か
そろそろと顔をあげると困った表情の彼と目が合った、彼は私と居るとき笑ってるか困ってる表情ばかりだ


「勢いであんなことしてスマン」

「え?あ…うん」

「けど後悔しとらんから」

「…」

「ホントは返事貰えるまであわんつもりじゃったけど…」


だから昨日思い切り逃走されたのか…
正直照れて逃げたのかと深読みしてしまった自分が恥ずかしいよ


「けどそう思っとるといつも以上に会いたくなったからきた」

「駄目じゃん」


そう言うとやっぱり困った表情のまま笑うので近くまで手招きで呼び眉間をグリグリと押してやる


「困った顔も駄目、取あえず笑ってて」

「じゃけど…」

「何、折角吉報知らせてあげようと思ったのに」

「吉報って俺の告白OKとか?」

「うん」

「やっぱりOKなわけ…は?」


ポカンとした顔がなんだかおもしろくて笑いそうになったけど何とか抑え、昨日散々悩んでたことを打ち明けることにした


「雅治くん、私普通の子と違うけどそれでもいいならお付き合いしてもいいよ」

「普通の子と違う?」


その表情のまま目を瞬かせる雅治くんが純粋な少年に見えてに少し言うのが戸惑われたけど思い切って言うことにした


「私、腐女子なんだよね」

「え」

「あとゲーム大好きだしオタクだし」


思い切って言ってしまえばなんだかすっきりした気分になった


「…ふ」


勝った、と特に勝負してるわけでもないのに思うのはやはり中二病の性なのだろう
今なら振られても大人しく受け入れられるだろう凹むけど


「…ありがとう先輩」


神妙な表情を作る雅治くんにやっぱり無理かと断られる覚悟を決めた


「…腐女子ってなんじゃ」

「そっからか」


これでダメだったら普通に振られるよりダメージが大きいかもしれないな


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